‡CRYSTAL‡ 脳裏に巡る言葉 ――――――――― ―――――― ――― 謁見の間を退室した後、セーマはエクセニア城の長い廊下を歩いていた。 城の家臣やメイド達はセーマとすれ違う度に、丁寧に会釈をする。 一介のハンターが、まるで貴族の客人として持て成されている気分だった。 「あの皇帝…何考えてるんだか」 先程見た皇帝の表情は、この上なく穏やかだった。 皇帝の言う“彼女”と自分を重ねているのだろうか。 「…俺に似てる亜人の女、か」 そのような人物は、見た事も聞いた事もない。 そもそも黒い狐の亜人種は珍しい。 城に滞在した程の身分の者なら、顔見知りでなくともセーマの耳に入っている筈だ。 ――この地上エクセニアでは、亜人種は差別の対象となる存在なのだから。 『世界を支配すべきは、ヒトではなく亜人だ。 俺達は優れた能力を持ち合わせた、最高の種族なのだから』 その時、散々耳にしたレイヤの言葉が甦る。 セーマは悲哀に瞳を細め、ふと窓の外に視線を向けた。 . [前へ][次へ] [戻る] |