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‡CRYSTAL‡
セーマと“彼女”




兵士を下がらせた為、謁見の間にいるのはセーマと皇帝のみ。

その所為か、セーマは気など使わず砕けた口調で質問をした。


「つーか…何で俺だけ城に残らなくちゃならないんですか?
ロゼ達には立派な宿を用意したのに」


セーマに城へ残るよう命じたのは、外ならぬ皇帝だった。

地上世界の王である皇帝リードが、何故自分のような一介のハンターを傍に置くのか。

そう疑問に思わぬ方がおかしいだろう。


皇帝は優しい笑みを絶やす事なく、口を開いた。



「興味があるのだ、君に」

「…俺に?」

「昔この城に、君に良く似た亜人の女性が住んでいたのでね」


皇帝は遠い昔を懐かしむように、広い部屋の天上を仰いだ。



素直な“彼女”

気の強い“彼女”

とても気高い女性だった。



「…20年以上昔の話だ。
当時皇帝だった父王が行っていた亜人への差別行動に異論を唱えるべく、“彼女”は単身城へ乗り込んできたのだよ。
当時、差別問題など重要視していなかった私は、その女性に叱咤されたよ」


『貴方の国の現状を、貴方自身が知らなくてどうするのですか』



――余程大切な人物なのだろうか。


その人を語る皇帝の表情は、幸せそのものだった。



『女か、陛下もやるね』

そう茶化そうとしたセーマだが、その人物には踏み入れてはいけない領域のようにさえ感じた。


セーマが押し黙っていると、皇帝は静かに口を開く。



「セーマ……君には、宝物があるか?」

「宝…?」

「自分の持つ全てに代えてでも、守りたい宝があるか?」



――…宝?


名誉、地位、財産。

その全てを捨てて

守りたい、もの。




「…さぁ?金さえあれば、大低のものは手に入りますからね」

「真に大切なものは、金では手に入らないのだよ」


諭すような口調に、セーマは小さく首を横に振った。



「まだ20年そこらしか生きてないガキですから。
命を張って守りたいものなんて、見付けてません」

「…そうか。ならば、一つだけ忠告させてくれ」


皇帝は玉座から立ち上がり、セーマの前まで歩み寄る。

そして彼の肩に手を置き、真剣な表情で言った。



「宝は、失ってから大切だと気付くものだ。
だが真に大切なものを守り抜いた時、人は生きる意味を見付ける」

「…どういう意味ですか」

「かつて、私が大切だった者の言葉だ。
君になら、その意味が分かる」




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あきゅろす。
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