[通常モード] [URL送信]

‡CRYSTAL‡
地下研究所
―――――――――
――――――
―――




「手伝ってもらって申し訳ないデスねぇダイアス君。
長期任務の後で疲れてるのに」

「いえ、お気遣いありがとうございます」


司令部の地下に存在する、研究所。

ダイスとウォンは、その長い廊下を歩いていた。

ティナの精密検査に必要な書類やら器具やらを、ダイスは大事そうに抱えている。


「ところでダイアス君。
君から見た彼女の素質は、どうデスか?」

「素質…ですか?」

「憂歌の威力を実際に目の当たりにしたんでショ?」

眼鏡の奥の瞳が、怪しく光る。

興味に満ちた視線を受けながら、ダイスは至って冷静に答えた。



「憂歌は強大な力です。
獰猛で凶暴なオルガの大群でさえ、憂歌の力には敵いませんから。
…彼女が憂歌を紡ぐ度、その身は風化し、空に還る」


一瞬思い詰めた表情を見せたダイスだが、すぐにいつもの笑顔をウォンに向ける。


「彼女が計画に加わるなら、きっとオルガを退ける事が可能でしょう」

「“計画”…ね」


意味深に笑い、ウォンは自身の眼鏡に触れた。



「ダイアス君…。歌姫を首都にまで連れてきた君になら、特別に教えて差し上げまショウか」

「何を…ですか?」

「――…君の言う『オルガ絶滅計画』デスよ」




――――――




ウォンの後に続き、連れて来られたのは小さな研究室だった。

薄暗い室内の奥へと、明かりも付けずに足を運ぶ。


その部屋の奥に、一つの扉があった。

カードキーや指紋認証など、やけに厳重な扉の向こうへと足を踏み入れる。



「博士、ここは一体…」

「…特別研究室。部外者を入れたのは、君が初めてデスよ」


意味深に笑いながら、ウォンはダイスを中へ促す。




「見せて差し上げマス。
――地上世界の切り札を」



突然点けられた照明に、ダイスは思わず目をつむる。

段々と光に目を慣らし、

恐る恐る瞼を上げた――…



.

[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!