‡CRYSTAL‡ 引き裂かれた親子 「彼女、コンサート前に買い出しに行ったきり帰ってこないんだ…」 ダイスが心配そうに零すと、ふぅと荷物を地面に降ろしながらカウルは口を開く。 「平気だろ? 集合場所決めておいたんだし、子供じゃねぇんだから――…」 「カウルっ!!」 「うわぁあっ!!!!」 次の瞬間、彼はロゼとヒルダに勢い良く胸倉を掴まれた。 「ティナは女の子なのよ? 誘拐でもされてたらどうするの!!?」 「そうだぞ!!何かあってからじゃ遅いんだ!!」 「わ、わ、悪かったよ!」 物凄い剣幕で怒鳴り込んだ二人に、カウルは思わずたじろいでしまった。 その様子を傍観しながら、ダイスとモークは苦笑している。 「愛されてるね、ティナ」 「特にあの二人は、ティナさんの保護者みたいなもんすからね」 ――幼いティナを保護していた5年前。 ロゼが自分に懐いていた彼女を、実の娘のように可愛がっていたことをダイスは今も覚えている。 きっと当時のティナも、ロゼとニーナを本当の両親のように慕っていたに違いない。 ――だが運命はねじ曲がり、ニーナは死に、ロゼはティナを捨てた。 5年前に起きた悲劇な事件を思い出し、ダイスは浮かない表情のまま、ティナを心配するロゼを見つめた。 . [前へ][次へ] [戻る] |