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‡CRYSTAL‡
REPAIR SHOP





―――――――




夕方の市街をロゼは歩く。

ドールはリュマノやサリファ程栄えてはいないが、活気があり、賑わっている。

農業が盛んな街で、ドールで採れた野菜や果実は世界中に出荷される。
田舎街ならではの暖かみがあり、素朴で平和な土地だ。



「修理屋は…ここか」


ふと古ぼけた外装の店の前で足を止めた。
看板に大きな文字で『REPAIR SHOP』と書かれている。

ロゼは迷う事なく店内へ足を踏み入れた。



「すんませーん」

「おや、珍しいお客人だ」


ロゼの呼び掛けに反応し、店の奥から店主が顔を出す。
穏やかな雰囲気のその店主は、目を細めて微笑んだ。



「これと同じ型のボルトを探してるんだけど…」

「ふむ」


差し出された部品を、店主はまじまじと見つめた。
そして、小さく溜息をつく。



「…悪いね兄ちゃん、こんな特殊な部品はうちみたいな店じゃ扱ってないよ」

「えっ!マジかよ?!」


どうすっかなぁ〜、とロゼは頭を抱える。

部品が無ければ船は動かせない。
だからと言って憎き政府の手助けを借りる事など、ロゼは意地でもしたくないのだ。



「代用品とかねぇのか?」

「そもそもこんな田舎街じゃ品数は少ないからねぇ。
…ん、でも待てよ?」


店主は思い出したように声を上げた。



「マグイさんなら、或いは持ってるかもしれん」

「…マグイって、あの名工マグイか!?
この街にいるのかよ!?」



名工マグイ・ヴァルカン。
それは武器や防具、機械等を造らせたら、右に出る者はいないという程の鍛治屋だ。



「今は隠居して、西の山奥に一人で住んでいる筈だ。
この街でも何回か見掛けた事もあるしなぁ」

「こりゃツイてるぜ!
ついでに俺のヴァーツォルドも鍛えてくんねぇかな」


嬉しそうに腰の愛剣を撫でるロゼ。
だが店主は小さく唸った。



「どうかねぇ…?
なんせ人間嫌いの変わり者で有名だからなぁ。
まぁ行ってみるといいさ」


そう言って店主が西の山を指差した、その時だった。






―――ドオォォン!!!



「な、何だ!?」


突如鳴り響いた轟音。
咄嗟に音のした方を見ると、茜色の空に似つかわしい黒い煙が立ち上がっていた。




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あきゅろす。
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