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‡CRYSTAL‡
品定め、そして交渉
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「…ねぇ、何で洋酒がこんなに高いの?」

「ドール産の葡萄は、普通の物とは質が違うからね。
兄ちゃん知らないのか?」

「…只のパシリだからね」


商店街にて買い物中のセーマは、酒屋の店主に値段交渉をしていた。

金に煩いセーマは、例え師匠の使い走りだとしても、妥協はしない。



「ほらこの洋酒、ちょっと濁ってない?
色も微妙に悪いし、瓶によって量も違うじゃん」

「言うね、兄ちゃん…。
分かったよ!!ちょっと負けとくから…」

「あ、瓶に傷が」

「わ、分かったから!!
半額にしとくから!!」


渋々半額の代金を受け取る店主に、セーマ小さく舌を出して『ありがとね』と笑った。








賑わう商店街を、セーマは買い物袋を片手に歩く。

頼まれた買い物は、酒と石炭だったが、セーマはそれ以上に買い込んでいる様子。



「まったく…。
酒とつまみを主食に、よく今まで生きてこれたな…あのじーさん」


師匠の家から出る時に、メイドロボのアリスに食材も頼まれたのだ。
聞けば、貯蔵庫に野菜類は殆ど置いていないという。

めぼしい物は殆ど値段交渉に成功したセーマは、戦利品を持って家へ向かおうとしていた。




――バタバタッ!



「おい、大変だ!リミル村がオルガに襲われたらしいぞ!!」


突然、一人の街人が慌てた様子で叫んだ。
その話に、セーマは聞き耳を立てる。


「リミルが!?ここから近いじゃないか!!」

「オルガも遂にこの地域まで来たか…。
くそっ!だがこの近隣にハンターなんて…」







「ハンター、捜してんの?」


街人達の話に口を挟んだのは、他ならぬセーマだった。



「何なら俺を雇ってよ」

「兄さん…ハンターか?」

「『漆黒の狐』って結構評判なんだけど」



その異名を口にした途端、街人がざわつき始める。



「し、『漆黒の狐』が何故こんな田舎に?!」

「まぁ…色々あって」

「何にせよ、助かるよ。
この付近のハンターは皆、都会に行ってしまったからねぇ…」


ハンターはオルガから街や都市、ヒトを守る事で生計を立てている。
無論、都会の都市の方が稼ぎが良い為、この辺りにハンターはいなそうだ。



「――どうせ近い将来オルガが消えるなら、今のうちに稼がなきゃ、ね」


街人達と新たに契約を交わしたセーマは、妖しく呟いた。

例え小さな田舎の街であろうとも、『漆黒の狐』は金に妥協しないらしい。




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