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‡CRYSTAL‡
ヴァーツォルド






――シュウゥ…

ロゼの取り出した武器は、巨大な両手剣。
刀身が蒼く輝き、紋様が浮かび上がっている。



「魔剣ヴァーツォルド。鋼で造られた俺の愛剣だ」

「へぇ…やるじゃん」


その威力に、セーマは不敵な笑みを浮かべる。
そして、目の前に広がる外の世界へ飛び出した。

立ちはだかるのは、4頭のオルガ。
セーマは素早くスカルレイヴの引き金を引く。



『ギィアアッ!!』

「いきなりご挨拶だね…っ」



――ヒュンッ!!

風を切る音がする。
放たれた弾丸は、的確にオルガの核を撃ち抜いた。



「雑魚を相手にしてたらキリがねぇ!!
群れを率いるでけぇ親玉を狙うんだ!!」


ロゼの言葉に、セーマは容赦なく周囲のオルガの核を打ち抜いていく。

それでも立ち塞がるオルガの群れに向かって、ティナは素早く歌を紡いだ。






 愚者よ、聴きなさい
 怒りの女神の言葉を


 心の傷を隠さず
 全てを晒し出せ――




途端に、凶暴だったオルガ達が大人しくなる。
彼らは嬌声を止め、真っ直ぐ上を見た。



セーマもつられて上を見る。
今朝は快晴だった空に、鈍色の雲が広がっていた。



「オルガはティナの憂歌で消える寸前に、必ず空を見上げるんだ。
…ティナはその行動を『空を恋しんでる』って解釈してるんだけど、どうなんだろうな」


オルガと共に空を見上げるセーマに、ロゼが話し掛けた。



「元々奴ら、隕石と一緒に空からやってきたからな。
あながちその解釈は間違ってねぇと思うけど」

「…空、か」

「おっと、無駄口叩いちまった!行くぞティナ!!」

「うんっ!!」


滝の方へと走って行くロゼの後を、慌てて着いて行くティナ。
その二人の後を、セーマが追う。




憂歌、記憶、銀色、空――…


彼女の揺れる銀髪を見つめているうちに、セーマの中にある好奇心が芽生え始めていた。






すると、その時。





『グガァァアアァッ!!』


――空気が揺れる。

辺りに聞いた事もない金切り声が響き渡った。





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あきゅろす。
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