‡CRYSTAL‡ 大量の敵 洞窟内部は薄暗く、ロゼは常備していたライトを点けた。 湿気を含んだ独特の臭いに、鼻の利くセーマは顔をしかめる。 暫く進んで行くと、不意にセーマが足を止めた。 彼の耳に微かに聞こえてきたのは 不自然な、金切り声。 「どうした…?」 「…すぐそこまで来てるよ」 優れたセーマの聴覚は、沢山の鳴き声を聞き分けた。 するとティナも少なからず反応を見せる。 「すごい数だわ…っ」 「俺には聞こえねぇけど…」 「もうすぐ滝が見える。注意して」 一人首を傾げるロゼに、準備を促す。 その時、ふとセーマの中で一つ疑問が浮かび上がった。 判別不能な程のオルガの声が、何故彼女には聞こえたのか? セーマは横目でティナを見る。 どこか不安げな表情で足を進めるその姿は、どこから見ても普通の少女。 けれど、彼女は――… 「来るわっ!!」 瞬間、 洞窟を抜ける直前に、見つめていた彼女が声を上げた。 セーマが我に返ると、自分達を目掛けて巨大な突風が襲い掛かった。 「はぁっ!!」 ――ズバッ!!!! ロゼは剣を抜き、振りかぶる。 身の丈程の剣は、向かってくる突風を見事切り裂いた。 . [前へ][次へ] [戻る] |