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【AA】double ace
一生、このまま










――下を向いて、泣きそうなユーシィを見ていたら…





俺も堪えきれなくなった。









ずっとずっと、我慢してたのに――…











視界いっぱいに広がる空が眩しくて、思わず目を細めて、腕で目元を隠す。

けれど目の前には確かに、心配そうに俺を覗き込むユーシィの顔があった。






「ケイ…」




慰めるように、俺の名前を呼ぶ。

優しすぎるその声が、堪らなく愛しい。











「…ユーシィはさ、俺といて楽しいか?」





気を紛らわす為の質問。

単なる気休めのつもりだったけど。







「俺といて、幸せか?」







何故だか、無性に聞きたくなった。





返ってくる答えなんて、

分かりきってるのに――





ユーシィはその質問に一瞬驚いてたけど、すぐに首を縦に振った。










「うん…楽しい。すごく幸せだよ…」










ほら、やっぱり

聞かなきゃ良かった…。







「そっか…」








そう返事をして、俺は漸く腕を退けて顔を見せる。

するとユーシィは、頬を伝っている俺の涙を優しく拭ってくれた。



深海の、蒼い瞳。

吸い込まれそうな、色。











「じゃあ、さ…」








無理に笑おうと、口許を歪める。

今きっと、ひどい顔だ。

哀しそうなユーシィの顔が、視界に広がる。



















「……一生こうしていたい、な」
































何故、こうなった?





何が悪かったんだ?







なぁ、母さん。


いっそ、産まれてくる俺を捨ててくれれば良かったのに。

殺してくれれば、良かったのに。




そうすれば、例え短い時間でも、父さんと一緒にいれたんだろう。

山奥で、隠れるように暮らすことも無かったんだろう。




母さんだって、きっと幸せになれたはずだ。










彼女に対するこの気持ちの名前、俺は知ってる。


でも言葉にはしない。


伝えちゃ、いけないんだ。








だって俺にとって彼女は、世界で一番幸せになって欲しい人。




だけど、俺の手で絶対に幸せに出来ない人。















だから、どうか







今だけは


今だけは










彼女の隣で幸せを感じる事を






許してくれ…――








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あきゅろす。
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