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【AA】double ace
ケイの義務






だが不意にケイはその視線から目を反らし、ゆっくりと立ち上がった。



「…ケイ?」



突然の行動に、ユーシィは首を傾げてケイを見上げる。

ケイは目を細めて、花びらの舞う花畑を見据えながら言った。





「…俺にはまだ、やる事があるんだ」


「――……」


「シンを…あいつをこのまま放っておけない。…あいつは、俺自身だから」


「…うん」




ケイが言葉を発する度に、ユーシィは徐々に顔を俯かせた。

自分の膝を抱える手に力が篭る。





「…それから」







――やめて、聞きたくない。
















「世界を…決めなきゃいけない」















――知ってるよ。




そんなの、初めから分かってた事じゃない。





ケイは【カイザー】。






世界を選定して、都市を破壊する為に産まれた人間。





破滅の…使者―――











「…もう決まったの?どの都市を選ぶか」



自然と声が震えてしまう。

ユーシィは顔を見られない様に下を向いて、ケイに問い掛けた。

すると、ケイは小さく溜息をつく。






「…正直、まだ悩んでる」


「そう…」


「でも…俺はっ」





続きを言おうと、ケイはユーシィに視線を落とす。

するとそこで初めて、ユーシィが顔を俯かせている事に気付いた。





「…ユーシィ?」



ケイに名前を呼ばれて、彼女はハッとする。

だがその時にはもう、ケイはユーシィの目線に合わせて目の前にしゃがみ込んでいた。

こんな泣きそうな顔は絶対に見られたくない――と、ユーシィは強く瞳を閉じる。








「…なぁ」



ケイが声を発すると、一瞬ユーシィの肩がビクッと震える。







――嫌だ。

こんな顔して

ケイを困らせたくないよ…っ――




そう強く願った時、ケイが口を開いた。











「…市街に帰ろうか」


「…え?」


「俺、腹へったしさ。またあのリンゴが食いたい」





なんとも間抜けな返答に、ユーシィは思わず顔を上げた。







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あきゅろす。
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