【AA】double ace 暗闇での交差 「また…ここか」 真っ暗な闇の中に、一人佇む青年がいた。 日に焼けたような色素の淡い朱い髪と、 エメラルドの様な美しい翡翠の瞳を持つ青年。 ――ケイだ。 「前にも、こんな場所に来た事があるな…」 『覚えてたんだ…』 独り言だった自分の呟きに思いもよらぬ返事をされ、ケイは暗闇の空を見上げる。 そして特に驚いた様子もなく、口を開いた。 「シン……俺に何の用だ」 『はは、バレたか』 「何の用だと聞いている」 おどけた自分の半身に、ケイは怒りに似た感情を抑えながらも問い掛けた。 ケイは以前も同じ様な暗闇に喚ばれ、シンに過去の夢を見せられた。 という事は、今回もケイは眠っている状態のまま、意識だけがシンに喚ばれた事になる。 『ケイに用はない。ただ…もう少しだけここにいて貰うよ』 「なんだと…」 姿を見せない相手の声が暗闇に響く。 シンの返答を理解できないまま、ケイは眉間に皺を寄せた。 するとシンは楽しそうな声で言い放った。 『俺はこれからクレミアに行くんだよ。 ケイの大事な大事な[夢神子]を…殺しに、さ』 「…っ!?」 動揺を隠せないケイに、シン容赦なく続ける。 『邪魔はさせないから。 全てが終わるまで、大人しく眠っているんだな』 「てめぇ…っ!ユーシィに何かしたら、俺がお前を殺してやる!!」 ケイの怒声は暗闇に響き渡って消える。 すると怒り狂うケイに対して、シンは意外にも落ち着いた声色で話し始めた。 『なぁ…ケイ、ユーシィって』 「…?」 『ひ弱な人間のくせにに必死に頑張ったり…、さっきまで怒っていたかと思えば急に笑ったり…。 …まるでさ』 「…何が言いたい?」 『――まるで、母さんみたい…だな』 [前へ][次へ] [戻る] |