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【AA】double ace
移住の許可





「ユーシィ様っ!!」



〈夢幻城〉へ入城したユーシィ達を、神官や侍女達が慌しく出迎えた。



「ああ…ユーシィ様!無事に帰ってこられたのですね!!」

「心配かけてごめんなさい、神官様…。私は大丈夫です」



心から安堵の表情を浮かべる神官は、ふとユーシィの背後に付く大勢の人々に首を傾げる。




「ユーシィ様…そちらの者達は?」



よく見ると、彼らの服装はクレミアでは見慣れぬものだった。




「神官様、彼らは…――」

「僕達は、北聖都インステラの者です」



ユーシィの言葉を遮り、ヤンノが一歩前へ出た。

そして状況の分かっていない神官に、深々と頭を下げる。



「突然の訪問…大変失礼しました。
ですが我々北聖都の民は、とても生活できる状況ではなくなってしまったのです。
どうか、貴都の力をお借りしたい」



威厳を持った口調は、さすがは聖都の統率者といったところか。

ヤンノは頭を下げたまま、地に片膝を付く。




「どうか…どうか少しの間だけ、我々をクレミアに移住させて下さい」



「なんと!異国の民がクレミアに!?」



突然の事態に神官は瞳を見開き、動揺を隠せない様子だ。

するとヤンノに続き、インステラの民が次々と神官に頭を下げる。



「神官様、お願いします!!」

「必ず自分達で都市を復興させて見せます!
それまで…私達を助けて下さいっ!!」



その光景にその場にいた神官や侍女達は、ただ驚く事しか出来なかった。

だが、次に頭を下げたのは…――











「私からも、お願いします」

「ユーシィ様っ!?」



遂には[夢神子]であるユーシィまでもが、地に膝を付いて頭を下げる。

都市の統率者である[夢神子]が、一介の神官に頭を下げるなど、前代未聞の出来事だった。


だがそのような事、ユーシィには関係ない。






「彼らに協力してあげたいんです…お願いします!」

「お、お顔を上げて下さい」


まさかの展開に神官は焦って、ユーシィに立ち上がるよう促す。



「そもそも許可を出すのは私ではありません…。[夢神子]である貴女の役目でしょう?」


「ですが私の独断で決められる事では…」


「確かに、我が国民がどの様な反応を見せるか見当も付きませぬ…」



深刻な問題に、ユーシィと神官が考え込む。

すると、ヤンノは明るい声を上げる。



「僕ら受け入れてもらえるように頑張ります!なぁ、皆?」


『はいっ!!』



明るく返事をするインステラの民。

皆、祖国を失っても前向きに生きようとしているのだ。






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