【AA】double ace
開かれた最後の扉
その時、ディクセンは話を中断させて先を急かした。
「ユーシィ様…ケイをどこかに休ませなければ」
「そうね。でもゲートが閉まってる以上…どうしたら――」
「ゲートは、開いていますよ」
ディクセン、ユーシィ、セリルは一斉に言葉を発したヤンノの方に振り向く。
「う、嘘…」
「本当です。…ゲートに避難したのはいいけど、他国に無断で逃げ込む事に躊躇してた所で……」
それを聞いたユーシィは、急いで扉の前に向かう。
装飾で彩られた巨大な扉は確かに開いており、中は空間の歪みでうごめいている。
ユーシィとディクセンは、思わず息を呑んだ。
「本当だわ!でも、どうして…?」
「…恐らく、あのシンという男の力が影響したのではないでしょうか?俺がユーシィ様を追って来れた時も、同じような現象が起きましたから…」
【カイザー】の力のみに反応するゲート。
先程の男がインステラを破壊した強大な力が、ゲートに反応し、空間を開いたのだと推測される。
理由はどうあれ、この好機を逃したくは無い。
「インステラの人達は私が誘導するわ。
ディクセンはケイを連れてクレミアへ!!」
「はい、後を頼みます!!」
了解したディクセンは、迷う事なくゲートを潜った。
彼の体が光に包まれ、一瞬の内に姿を消す。
その光景に、民は驚愕した。
「き、消えた!?」
「皆さんも早く!いつゲートが閉じてしまうのか分かりません!!」
「だ、だけど…」
未知なる扉を前に、民は躊躇した。
「こ、この先の異国へ逃げるったって…」
「本当に、そんな事をしていいものなの?」
「【カイザー】様は我らの都市を破壊した。ならば我らも、ここで朽ちる運命ではないのか…?」
「それでは創造主様の予言に反してしまう!」
インステラの民は、信仰心が強い。
その為【カイザー】の下した審判に反し、生き延びることを疑問に持ってしまった。
誰一人として前に出ない彼らに、ユーシィは段々と苛立ち始める。
そして、遂に。
『いい加減にしなさーーーーいッッ!!!!』
切れてしまった。
「貴方達は自分達の手で都市を滅ぼすつもり!?
まだインステラは死んでないわ……国は、民がいる限り何度でも甦るのよ!!!
それなのに、肝心の貴方達が諦めてどうするの!!?」
「ゆ、ユーシィさん…落ち着いて」
「いいから早くっ!!ゲートが閉じる前に行きなさいってば!!!!」
『は、はいぃっ!!!』
完全に我を忘れて説教モードに入ってしまったユーシィ。
民はそんな彼女に臆し、我先にとゲートを潜っていった。
そんな中、最後に残されたヤンノが小さく呟く。
「――何度でも甦る…か」
「ヤンノ、早く!!」
「ああ、行こうセリル。僕らの都市を、守る為に!!」
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