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【AA】double ace
“ケイ”






“ケイ”の腕を振りほどけず、ただ肩を震わせる事しかできなかった。




声は確かにケイの筈なのに、直感的に別人だと悟った。





何より、目の前の彼は





“長い黒マント”で顔を隠しているのだから…――




















「…俺は」




ようやく“ケイ”が口を開いた。

耳元で低い声が響く。








彼は、妖しく口の端を吊り上げた。


だがユーシィに見えない。




“ケイ”は、ユーシィの背中にゆっくりと掌を這わせる。












「俺は……」






異変を感じたユーシィは、顔を上げて“ケイ”を見た。

彼の表情は、狂気に満ちていた。










「【カイザー】だ」






「!!!!」






















――これは、マラゲーニャで見た夢だ。









怖い。





…怖いっ――――















「さよなら、ユーシィ」







そう囁かれ、背中に物凄い熱さを感じた瞬間。






――ドォォォンッ!!!!





激しい爆音が鳴り響く。




ユーシィは瞳を強くつぶった。

夢の中では自分は彼に殺されていた筈。















――だが







「……?」





さっきまでの彼とは違う体温に包まれる。




ユーシィはゆっくりと瞳を開けた。














――朱い…











「ユーシィ!」


「…ケイ?」




そこには、紛れも無いケイの姿があった。






「ユーシィごめんな…!一人にさせて…ごめん…っ」



目の前のケイは悲痛の表情を浮かべながら、ユーシィを力いっぱい抱きしめる。






「ケイ…っ」






本物だ――…



そう悟ったユーシィの瞳からは自然と涙が零れ落ちる。


抱きしめられた背中が痛い。

恐らく火傷を負っただろうか…。

だがそんな事を気にせずに、ユーシィもケイに縋り付いた。







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あきゅろす。
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