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【AA】double ace
舞姫の鎮魂歌





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ケイが眠っていたのは、都市インステラの宿だった。

倒れて直ぐに、ディクセンによって運ばれたらしい。

その彼が薬を持って帰ってきた後、それまでの重い空気を消す為、ユーシィは何事もなかったかの様に振る舞った。

ケイは、前以上に口数を減らしていた。










――その夜。

薬を飲んだケイだが、昼間たっぷり眠ったせいか、目が冴えてしまっていた。

幸い熱が下がったので、ユーシィ達が寝静まった後、ケイは一人宿の外に出る。



インステラは霧に包まれた都市だった。

民は他のどの都市よりもネイフェリアを崇拝し、人々は毎日教会に足を運んでいると、ディクセンから聞いた。

正に、宗教都市…――






夜でさえ、教会で一心不乱に祈りを捧げる民を見て、ケイは呟いた。




「礎の創造主…か」





本当にいるのかさえ分からない神。

もしかしたら、空想上の存在なのかもしれない。



そんなものに躍らされているのかと、ケイは乾いた笑いを漏らした。



霧のかかった空には、朧月が悲しげに浮かんでいる。

小さな公園に差し掛かかったケイは、噴水の前を横切ろうとした。


その時――


















『礎の約束


果てなき世界は


空へと還る――』











歌が、聞こえた。

自然とケイは歌声のする方へと、足を進める。


うっすらとした月の光に照らされた噴水広場。

そこでは少女が一人、美しく舞いながら歌を口ずさんでいた。



年は、およそ13〜14歳くらいだろうか。

儚い歌声と共に、舞い踊る度に短い山吹色の髪が揺れる。



いつの間にかケイは、少女の舞と歌に魅入っていた。















『御剣(みつるぎ)の涙

御魂(みたま)の憂い



夢見る旅人は

主に尽くし



使者は愛を知る




最果ての地で

約束を果たす――』











――不思議な歌だった。

心の奥底から、何かが沸き上がってくるような。








歌い終わった少女は、静かに舞を止めた。


伏せていた顔を上げ、ゆっくりとケイを見る。






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