[通常モード] [URL送信]

【AA】double ace
【カイザー】の正体




 ――その場にいた誰もが、目を疑った。

 黒いマントの男の正体は、ユーシィと同じ年頃の若い少年だったのだ。


 「…っ!!」


 マントを失った青年は、腕で自分の姿を隠そうとする。

 晒されたその朱い髮と翡翠の瞳は、まさしく――…


 「――【カイザー】だ!!」

 「破滅の使者がクレミアに降臨したんだっ!!」


 渦巻く恐怖。
 一斉に逃げ惑う人々。

 <夢幻城>はあっという間にもぬけの殻となってしまった。

 残ったのは青年とユーシィ、ディクセン、それに神官と城の兵士達のみ。


 自分の姿を見て混乱した民の様子に、青年も動揺を隠せなかった。


 「な、何だよ【カイザー】って!俺の事…か?」


 ユーシィを掴んでいた青年の手が緩む。

 その隙にディクセンは、ユーシィを自分の方へと引き寄せた。


 「ユーシィ様!お怪我は!?」

 「わ、私は大丈夫よ。それより…」


 ユーシィは青年に視線を移す。

 彼は訳が分からずに立ち尽くしていたが、やがて静かに俯いた。

 すると、今まで腰を抜かしていた神官が口を開く。


 「ユ、ユーシィ様…。この方は…本当に?」

 「神官様!戴冠式を一旦中止してください!
今は彼を保護しなければ…」

 「保護…?どういう事ですか?」


 その言葉にディクセンは首を傾げる。

 するとユーシィは、哀しそうに立ち尽くす青年の姿を見つめた。








 「彼は、自分が【カイザー】である事を知らないのよ。
生まれながらに請け負った、その使命さえも――…」





[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!