[通常モード] [URL送信]

【AA】double ace
ジレンマ








『俺は…ユーシィに…』






私に…何?



何を言おうとしたの?




どうしてそんなに悲しそうな顔するの…?

























地に足が着き、重力が安定する。

ゲートを抜けたユーシィはぐるりと辺りを見回した。

ひんやりとした空気を感じ、少し身震いをする。




「寒いのですか?ユーシィ様」


そんな彼女の様子に気付いたディクセンが、心配そうに顔色を伺う。


「少し…でも大丈夫!」

「ここはクレミアより気候が低いようですね。
お風邪を召されぬよう、一旦近辺の建物を探しましょう」


ディクセンは防寒用のマントをユーシィに着せると、先頭をきって出入口へと歩いて行く。

後に続こうとしたユーシィは、ふと振り返った。

肝心のケイは扉の前から動かずに、俯いて何かを考え込んでいるようだった。

不思議に思ったユーシィは、彼に歩み寄った。


「ケイ…、ディクセン行っちゃったよ?」

「え?あ、うん…」

「…どうしたの?」


『なんでもない』とケイは言うが、昨夜から明らかに様子がおかしい。


まさか、と何かに感付いたユーシィは、そっとケイの額に触れた。




――…熱い。



「ケイ、熱があるわ!」

「…そういえば、なんだか気分が…」


ケイは顔を仄かに紅潮させ、朦朧とした頭で考えを巡らせると、心当たりに気付いた。



「色々…難しいこと考えててたから、かな…?」

「えっ…もしかして、知恵熱?」



そんな事を話している間にもケイは瞳を虚ろにさせながら、ふらふらとしていた。


頬に触れるユーシィの小さな手は、外気に触れた所為で冷えきっており、ケイにとっては心地好く感じられた。


その瞬間、足の力が抜け、ガクッとその場に倒れ込んでしまう。



「えっ?ちょっとケイ!しっかりして!」

「どうかしましたか!?」

「ディクセンっ!!大変!ケイが――…」








声が、遠のく。












――…なぁ、ユーシィ。





遂に最後の都市まで来てしまった。







ここを抜けて、クレミアに帰ったら





俺達…もう会えなくなるのか?






[前へ][次へ]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!