【AA】double ace
運命の女神
――それから、ひたすらトランプ、コインと睨めっこをする特訓は、夜が明けるまで続いた。
『――…レイ、アレイ!』
『…どうした?』
翌朝、まだ日が昇りきっていない頃に、一人眠ったアレイをケイは起こした。
アレイは辺りを見回す。
ケイの座っていたソファの周りには、沢山のトランプとコインが散らばっていた。
『ケイ…お前、一睡もしなかったのか…』
『いいから!俺、出来る様になったんだ!!試してくれよ!!』
ケイはアレイを急かすように椅子に座らせる。
アレイは散らばっていたコインを一枚取った。
『これから10回コインを投げる。
お前は力を使って表と裏…交互に当てろ』
『了解!』
眠っていないというのに、異常に張り切るケイ。
んなケイとは裏腹に、アレイは低い声で言う。
『いいか、二度目のチャンスはないんだ。
一回でも外したらその時は…大事な[夢神子]を取られると思え』
『…分かってる』
アレイの言葉に息を呑みつつも、ケイは大きく深呼吸をする。
そしてコインはアレイの手を離れ、宙を舞った――…
『フフ…。全く、大した奴だ』
アレイは散らばったコインを見つめながら、微笑する。
全てのコインを見事に当てたケイは、その安心感から急にソファーに倒れこんだ。
今になって睡魔に襲われ、気持ち良さそうに眠っている。
たった一晩で運の力を使いこなすとは、流石は【カイザー】。
彼をここまで動かすものは、一体何なのか。
その時アレイの頭に思い浮かんだのは、[夢神子]の少女。
『そうか――…運命の女神とやらの、お陰か』
かつてアレイにも、自分だけに微笑んでくれる女神がいた。
女神が望むのであれば、何でもした。
『――…ファーヌ』
勝つんだ、ケイ。
勝って、あいつを救ってくれ。
俺という柵(しがらみ)から、あいつを――…
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