【AA】double ace 大いなる力 そう言われたケイは、むすっとしながらソファに腰掛けた。 『さっきお前が説明した[デッドゲーム]って、決闘みたいなもんだろ?戦闘でなら勝つ自信あるぜ! そもそも運ってなんなんだよ?』 アレイは金貨を机に置く。 すると懐からトランプを取り出し、慣れた手つきできり始めた。 『決闘はあくまでも観客を楽しませる為の娯楽だ。 重要なのは3回しかないルーレットチャンス…これに全てを賭けろ』 充分にきったトランプを裏にし、一枚ずつ机に置き始める。 『ルーレットの止まった目が全ての運命を決める。 色別で…赤が挑戦者、青が対戦相手、白と黒が互いの景品となる』 ケイは唾を飲み込む。 静かに話を聞きながら、アレイのトランプを置く手を見つめた。 『止まった色のものに何が起こるか分からない…。 だから、確実に青を狙う必要があるんだ』 アレイはトランプの最後の一枚をケイに投げ付けた。 そのカードは… 『運とはギャンブルにおいて絶対的な大いなる力。 運を持たぬ者は…』 妖しく笑う、ジョーカー。 『破滅する』 ケイは、この時初めてギャンブルの恐怖を実感した。 『どうにかなるだろう』と思って引き受けはしたが、恐らくこのままでは負ける。 『多分』では駄目。 必要なのは『絶対』。 『…どうすればいい?』 ケイは真剣な表情で問い掛ける。 アレイは机に並べた52枚のカードのうち、一枚を指した。 『これに手をかざせ』 『は?…こうか?』 『瞳を閉じろ』 ケイは言われた通りにする。 『指先に意識を集中して、カードを感じ取れ』 『そんな事…』 『出来るさ…【カイザー】ならば』 ケイはハッと顔を上げて、アレイを見る。 『瞳を閉じろ。集中するんだ…』 言われたケイは、慌てて瞳を閉じる。 『【カイザー】が操る破滅の力…これはつまり自然界の力だ。 運も人間の潜在能力の一つ…。 だからお前に感じ取れない筈がない』 それを聞いたケイは、カードにかざした手に意識を集中させる。 ――見える…。 ぼんやりとだけど このカードは…――― 『…ハートの、キング?』 ケイがそう呟くと、アレイはフッと笑みを浮かべる。 ケイは瞳を開けてカードを開いた。 めくったカードは… 『………当たった…。 ハートのキングだっ!当たったぜ!すげぇっ!! ぼんやりとだけど…でも確かに見えたんだ!!』 子供の様にはしゃいで喜ぶケイに、アレイは穏やかな口調で言った。 『それがハッキリと見える様になれるまでが基礎だ』 『はっ!?これでもまだ基礎なのか!?』 『当たり前だ。トランプを当てられる様になったら次は再びコインを当てろ』 ちぇっと膨れながらも、ケイは次のトランプに手をかざしながら聞いた。 『なぁ、なんでそんなにコインにこだわるんだ?』 アレイは机に置いたコインを手に持つと、それをケイに向けて言う。 『運を養う為の特訓をトランプをするならば…コインは運を操る特訓だ』 『運を…操る?』 アレイは再びコインを投げ、パシッと手中に収める。 『コインは人の手を離れ、宙を舞い、再び手に収まる…。 この瞬間に自らの運を使い、コインの未来を変えるのだ』 『未来を変える!?…運ってそんな力だったのか!?』 ケイの意識はトランプから離れ、コインに集中する。 アレイはそんなケイを制止した。 『まずはトランプを当てろ…残りの51枚全てだ』 ケイは渋々ながらもトランプに集中した。 『スペードの…8だ!』 ケイがめくったカードは、見事に当たった。 『よっし♪つーかさ、こんな特訓したら相手に悪いな!未来を変えられるなら勝ったも同然だろ?』 自信満々なケイを、アレイは仮面の奥から鋭く睨んだ。 『ファーヌを甘く見るな…。 本来、運の勝負ならばお前より[夢神子]である彼女の方が遥かに有利だ』 『あ、そっか…未来を見る力だもんな』 『いいから…無駄口を叩くな』 [前へ][次へ] [戻る] |