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【AA】double ace
ユーシィのために




「ディクセン!!」

「ユーシィ様…っ」


縄で縛られた状態のまま、ディクセンは顔をしかめる。

ユーシィは彼の無事を確認し、胸を撫で下ろした。

すると再び、ファーヌは高々いに笑い出す。


「あははっ!!ほらね。
アタシの言った通りだろ、ディクセン!
このお嬢ちゃんはアンタを見捨てられない。
だからアンタを取り戻す為に、必ず自らを賭けるってね!!」

「てめぇ…っ!全部計算だったのかっ!!」


ケイは殺気立ちながら、ファーヌを睨みつける。

ディクセンは悔しそうに唸りながら、大声でユーシィに訴えた。


「ユーシィ様!今ならまだ間に合います!!
こんな危険な賭けから身を引いて下さいっ!!!」

「嫌よ!ディクセンを見捨てるなんて、私に出来る筈ないでしょ!?」


ユーシィは大きく首を横に振った。

ディクセンは眉間に皺を寄せながら、今度はケイに向かって叫ぶ。


「ケイッ!!お前からも説得しろ!!
第一、お前には俺を助ける義理など無い筈だ!!」


ディクセンの必死の訴えに、ケイは動じる事もなく無表情のまま答えた。


「…そうだな。ホントの所、俺はお前なんかどうなったって構わないし。
むしろこのままマラゲーニャに置いていった方が、好都合かもな」

「ケイ…ッ!!」


何とも軽薄なその言動をユーシィは咎めた。

だがケイは、真剣な表情で話を続けた。


「だけど、こいつはそれを望んでいない。
俺はお前の為に勝負するんじゃねぇよ。
――…ユーシィの為に、勝つ」


そう言って、ケイは隣に立つユーシィの肩に手を置いた。


「ケイ…」


その言葉に驚愕の表情を浮かべていたユーシィだが、真直ぐに前を見据える彼の凛とした横顔を見つめながら、次第に笑顔を見せる。

――だが。

そんな彼らの様子に、ファーヌは冷たい視線を投げ掛けていた。


「ケイ…本当に大丈夫なのか?」

「んな情けねぇ顔してんじゃねぇよ。
それによ、お前はユーシィを連れ戻しにここまで来たんだろ?
だったら最後まで責任持って送り届けろ」

「馬鹿を言うな…。責任はお前にあるだろうが」


ようやく普段のディクセンに戻り、ケイも不敵な笑みを見せた。





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あきゅろす。
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