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【AA】double ace
夢うつつ







―――――――――





どこまでも続く、暗闇――

とても静かで、酷く寒い。

そんな深い闇の中に、ユーシィは一人佇んでいた。


辺りを見回しても、何もない。

広がる暗闇に恐怖さえ感じ、ユーシィは自分の肩を抱いた。




その時、一瞬だが視線を感じた。

ユーシィは急いで後ろを振り向く。





振り向いた先にいたのは、朱い髮の青年。




『ケイ…?』



青年のどこか虚ろな瞳と、視線が絡まる。

翡翠に捕われる…。



その青年は、静かにユーシィに歩み寄った。

目の前にやってくる青年に、ユーシィは戸惑う。




『ケイ…だよね?』




ユーシィは不安げに問い掛ける。

だが青年は答えぬまま、静かにユーシィを見つめていた。

すると―――






『あっ…』





突然、力強く腕を引かれた。

そのまま青年の腕の中に囚われる。



けれどユーシィは、何故抱きしめられたのか、など不思議と疑問に思わなかった。


彼女の思考を止めたのは、暖かい温もり。

ただ腕の中の心地良さに酔いしれ、ユーシィは自然と瞳を伏せる。








『…俺は』




ようやく青年が口を開いた。

耳元で低い声が響く。








青年は妖しく、口の端を吊り上げた。


だがユーシィに見えない。




青年は、ユーシィの背中にゆっくりと掌を這わせる。












『俺は……』






異変を感じたユーシィは、顔を上げて青年を見た。

彼の表情は、狂気に満ちていた。










『【カイザー】だ』






『!!!!』








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あきゅろす。
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