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【AA】double ace
闇の落とし穴
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「ご宿泊ですか。
二名様なのでダブルベッドのお部屋で宜しいですね?」

「はぁ!?」


 寝殿を追い出され、一旦泊まる宿を探していたケイ達は、フロントで呆気に取られていた。

 何せここは歓楽都市。

 夜ともなれば、男女が泊まるその類の宿しか取れない状態だった。


「普通の宿はありませんか」


 と聞けば


「…普通はこれですが」


 と返される。

 これが西聖都マラゲーニャ。



「…どうする?ケイ」

「どうするったって…」


 答えられずに、ケイは目を泳がせた。


 だが答えは一つ。

 こんな宿に二人きりで泊まれる筈がない。

 だがここで断れば、野宿は確実。

 外で寝ることに慣れている自分は良いが、彼女にそんな無理はさせたくない。


「…分かった、じゃあ一部屋頼む」

「畏まりました」


 悩んだ末に、ケイは決断した。

 世界の命運を決める前に、この状況を乗り切る決断をしたのだ。


 ケイはフロントからルームキーを預かると、それをユーシィに手渡した。


「ほら、部屋はユーシィが使えよ」

「えっ、でもケイは…?」

「俺は良いよ、どっか適当な所探すから」

「それって…外でしょ?」


 するとユーシィは、そんな彼を見兼ねて、溜息混じりに言った。


「私はケイと一緒で構わないのに」

「……へ?」


ケイは目を丸くし、間の抜けたの声を出す。

ユーシィの言った事を理解するまでに大分時間が掛かった。


「…って、はぁっ!?
お前何言ってんだよ!?」

「場所なんてこの際どうでもいいの。
ディクセン奪還の話し合いの場が必要でしょ?
それなのにケイが外に行ったら意味がないじゃない」


 贅沢は言っていられない、という彼女の言い分も分かる。

 けれど、この状況はやはりマズイのではないか。


 案内された部屋は、そう広くはないが綺麗に整頓されていた。

 だがやはり家具より何より、部屋の大半のスペースを占めている大きな寝台が、ケイにとっては目の毒だ。

 すると次の瞬間、ユーシィはこの上ない笑顔を見せた。


「私はケイを信じてるからね?」

「は、はい…」


 笑顔の筈の彼女が、何故か恐ろしかった。






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