【AA】double ace
ここにいる理由
「も、申し遅れました!
私は東聖都クレミアの[夢神子]ユーシィ・シャリオンと申します!」
「東聖都の[夢神子]?
…何で[夢神子]が【カイザー】といるわけ?」
ファーヌは、頭を下げるユーシィを驚きと不快の眼差しで見つめた。
――…何故[夢神子]が?
以前ガノッサでマオやインガに同じことを問われた時は、ユーシィにもその理由を答えられなかった。
実際、自ら望んでゲートを潜った訳ではないのだから。
けれど、今は違う。
ユーシィは頭を上げると、壇上のファーヌを真っ直ぐ見て言った。
「掟に背いていることは承知の上です…。
でも私は、ケイと共に世界を見る事を決めたんです」
「ユーシィ…」
その言葉に、思わずケイの胸が高鳴った。
自分と一緒にいることを、彼女も望んでくれている。
そう思うだけで、嬉しくて堪らない気持ちで一杯になる。
自然と照れたように微笑みを浮かべるケイに対し、ディクセンは眉を潜めて顔を背けてしまった。
「あっははははは!!」
「な…何が可笑しいんですか!?」
突然、腹を抱えて笑い出したファーヌに、ユーシィは戸惑った。
それは、明らかな嘲笑だった。
「【カイザー】と世界を見るって…アンタそれ本気で言ってるのかい?」
即座にファーヌは玉座から立ち上がり、コツコツと高いヒールの音を響かせながら、ユーシィに歩み寄る。
彼女の頬に、ファーヌ美しい手が触れたかと思えば、顎を引き寄せられ、強引に顔を覗き込まれた。
「っ、」
困惑するユーシィの瞳には、美しい金色の髪から覗く、鋭い桃色の瞳が映る。
「【カイザー】と世界を巡って、どうするつもりだい」
「ど、どうするって…」
「例えば…自分の都市を選ばせる為に、このボーヤをたぶらかす…とか?」
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!