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『総長!!!』




空になった小瓶が総長の手から滑り落ち、パリンッと音を立てて割れた。総長は苦しそうに心臓をつかむように胸を押さえ、苦鳴を漏らしながら床に片膝をついた。私は慌てて総長に近づくも、来るな、と右手で制す。けれど、こんな苦しそうな総長を何もせず放っておくなんて、私はあとで絶対に後悔する。

私は彼の制止を無視して総長に近寄った。

その瞬間に、凄まじい殺気が彼から放たれたのを感じた。咄嗟に脇差しに手を掛けるも、時すでに遅し。彼の右腕が私の左肩を襲う。私は壁に強く肩を叩きつけた。衝撃が肺まで回り、肺の空気が押し出される。




『か、はっ…、ぐぅ!!!』

「くく…く、くっ……」




首に、山南総長の手がある。違う、あるだけじゃなくて…私の首を絞めている。

苦しい苦しい苦しい苦しい。息が出来ない。視界が揺れる。揺れる視界の先には、真っ白な髪に紅蓮の瞳。私は一瞬、訳が分からなくなった。今、私の首を絞めているのは、誰だろう、と。目の前にいるのは、誰だ、と。

刹那、私の頭の中で声が響いた。




「おい、その餓鬼もさっさと殺しちまえ!」

「ああ分かってる!」

「上からの絶対命令だからな…!“ ”は一人残らず殺せってな!」


(っ……!?)




なんだこれ

やだ




『やめ…てっ…』






前にも一度…
こんな事…




『さん、なっ…そうちょっ…!!』

「!」




私はその声を消し去ろうと、総長の名前を叫んだ。総長はぴくりと反応したが、変わらず力は増してくる。苦しさに堪えきれず、思わず私は刀に手を掛けた。しかしそれは抜かれることは無かった。彼は頭を押さえてまた苦しそうに呻きだし、私から離れたからだ。少し、理性を取り戻したようだった。

私はガクンと足元から崩れていき、両手を首もとに当てて必死に空気を貪った。何か、不穏な蟠(わだかま)りを感じながら。




20100616

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あきゅろす。
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