14
*
…何故だ。何故…
沖田組長と手合いなんか!!
─カァァァン!!
『ぐっ!!』
「ほら、余所見してると、死んじゃうよ?」
『(手合いで死ぬって何!?)』
…昨日、平助とのやり取りが終わった後、平助はあの場に来た目的(夕御飯の事)を思い出し、沖田組長を連れて行った。その時、沖田組長は私の耳元でこそりと呟いた一言。
“明日の朝、僕と手合いをしようよ。”
…と。もちろん断ろうとした。なんせ彼は新選組一番隊組長だ。そんな沖田組長と私じゃあ、天と地程の力の差だ。これが稽古の誘いなら喜んで受けるのだが…、手合いとなると、ね。ほら、沖田組長加減とかしてくれなさそうだし…何より、私にはまだまだ沖田組長と渡り合える程の力はない。近藤局長にもぶっ飛ばされちゃったし…。どの幹部にも一太刀で負けてしまうと思う。そんな私が沖田組長と手合いなんて、とんでもない。
そう思った。…が、沖田組長の微笑みは反論する事を許してはくれなかった。結局、断る事が出来ずに迎えた今日、木刀を握り手合いをしていた。
そして何故か、縁側には斎藤組長が座り、じっとこちらを見据えている。…視線が痛い!
考え事をしていて、一瞬、気を抜いてしまった。フッと姿を眩ませた沖田組長の動きが見えず、狼狽えると、目の前から突きが繰り出されていた。
「だからさ、」
『!』
「余所見は駄目って言ってるのに。」
─カンッ!!
飛ばされた木刀は、地面にカランと虚しい音を立てて落ちた。はぁ、はぁ、と肩で呼吸をしている私とは裏腹に、息一つ乱れていない沖田組長。この差は一体何なんだ。やっぱり、体力、とか。木刀を拾い、はぁー、と深い溜め息を吐く。
「何故溜め息を吐く」
『は?…あ、斎藤組長』
挨拶程度しかしたことのない斎藤組長に話しかけられるとは思わなかった…!まあ、自分の隊の組長なのだからこれからは話すと思うけど。
『何故…って』
「あんたは総司と幾度か木刀を交える事が出来た。少なくとも、その辺の平隊士よりかは刀が使えるという事だ。」
「そうだよ沙樹ちゃん。」
『…………………』
「………あ。」
『沖田組長ぉぉ!!!』
「ぶっ!」
今この人、あっさり私の正体ばらしたんですけど!「あ。」じゃないよ…!
慌てて沖田組長に飛び付いて両手で口を塞いだけれど、絶対に斎藤組長に聞こえたと思う。ど、どうしよう…!!
20100601
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