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廊下に現れたのは、…えーと…あ、そうだ、藤堂組長だ。藤堂組長は沖田組長と親しそうに話していて、私の事は眼中にないみたいだ。まあ、当たり前なんだけど。まだ、今まで隊士だった者がここにいればまた少し違うのだろうけど、私は今日入ったばかりの新人だ。大した話もないんだと思う。
私は邪魔にならないようにこっそりその場を離れようとした。
………が。
「そっちのヤツ、今日入った隊士?」
『!』
「そうだよ。ねえ、こっちに戻っておいでよ、沙樹“君”」
違和感たっぷりに私の名を呼び、手招きをしている組長。も、ものすごく行きたくない。(だって沖田組長すごい笑顔なんだもの…!)
このまま走り去ってしまおうかとも思ったが、流石にそれは失礼だと思い、諦めて二人に近寄った。
「へぇー。総司が自分から呼ぶとかさ、結構気に入ってるんじゃねぇのー?」
「まあね」
『………あはは』
「強ぇの?」
「そんなとこ。」
な、なんて居辛い!
駄目だ、組長二人に囲まれているこの状態、キツい。部屋に戻りたい。まるで珍しいモノのように私を凝視する藤堂組長。頭の天辺から足の先まで見られる。そして、藤堂組長は「ふーん」と言ってから、まあよろしくな。と微笑んだ。
『あ…、はい。よろしくお願いします、藤堂組長』
「………あー、」
『?』
「いいよ、平助で。お前歳近そうだし、これからなんか仲良くなりそうだし。みんなそう呼んでるから」
『えぇ!?む、無理です!組長を名前呼びなんて!!』
「呼んであげなよ。本人がいいって言ってるんだから」
『う…』
にこりと微笑む沖田組長。お、沖田組長には逆らえない…!私は青ざめながら藤堂組長…じゃなくて、へ、平助…に、「じゃあ、よろしく…平助」と言うと、彼は嬉しそうに「それでいいの。」と言った。
平助はいい人そうだ。
(平助は、…ね。)
20100530
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