『No pain,no gain』
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イスの背もたれ側を体の正面にして座り、親しげに話しかけてくる平次を見て、
周作は困惑したように眉を寄せる。
「一応、明後日までの予定で…
施設の方には、三日間だけ出かけるって書き置きしただけで来ちゃったし…
それ以上帰らなかったら警察沙汰になって、騒ぎになったらもう自由に出歩けなくなると思うから…」
「…ナルホドな」
切羽詰まった周作の雰囲気と態度…
余裕のない表情の出所は、ここから来ているのか…
と思った平次は破顔し、少年らしからぬ大人びた表情をする周作の眉間を人差し指で軽くこついた。
「!」
「なんで工藤のおとんに会わなならんのかはよう分からへんけど、
そないな顔しとったら、どんな慶事も着物の裾たくって逃げてまうで?」
こつかれた額を手で押さえ、平次を見ている周作の目が
心の変化に合わせて丸くなる。
「いつでも何時でも、自分らしゅういるんが一番や!
ビリケンさんみたいににこにこしとったら、
どない辛いことやって幸せなことに変わるんやで〜!」
イスの背もたれを抱き、にこにこと笑う平次を見ていた周作は…
固く結んでいた口元を笑みで緩ませ、額を押さえていた手を下に降ろすと、
ようやく肩に入れていた力を抜いて、少年らしくにっこりと無邪気に笑った。
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