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狼少年とうさぎ
その言の葉は、まるで


「じゅっ、十代目…っ!!」


「はははっ、ツナ元気なのな〜」


「テメェ野球馬鹿笑ってんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」



[その言の葉は、まるで]



山本が持っていたのはリボーンが自宅のスタジオ(総建築費〇億らしい)で録って焼いて、ある程度通っていてしかも口の固そうな常連にだけ無料配布している、sheepの歌が入ったMDだった。


しかもMDの色とラベルのタイトルを見る限りアレはラブソング特集だ。

俺が歌うのは、主に昔リボーンが歌ってた曲のカバーだが、元々の声質の違いのせいかまだ来ない変声期のせいか、全盛期のアイツがやたら卑猥に色気たっぷりで歌った女性目線のラブソングも、俺の口から出るとかなり甘ったるい(らしい。自己評価では餓鬼っぽいとしか思わないが)。


まぁ何はともあれ恥だ。

恥ずかしい。


自分で書いた歌詞でないのがせめてもの救いだろうか。

アレはアルコバレーノの作詞担当の言葉であって俺の言葉じゃないと言い訳が出来ないこともない。
…まぁ大分感情移入してるけど。

もし自分で書いてたら言い訳する理由は0だ。



屋上から一階分下りた踊場で一通り恥ずかしがってから、獄寺君達の元に戻る。

扉を開けると、獄寺君は苛々、山本はにこにこ。
獄寺君は俺の方を見た途端空気が和らいだがやっぱり苛立っている。


…山本が苦手なのかな??


獄寺君、基本的に"周り全員敵"な考えみたいだからなー…


はは…と思わず苦笑いを零しながらさっきの場所に座ると、山本が言った。





「そう言えばさ、ツナは自分のバンド作らねぇの??」


「自分の??」


「そーそー。さっき言った奴だって友達とバンド組んでて、自分達で曲作ったりしてるし」


「…自分の…そうだね…」



そう言えば自分には本当に自分だけのメンバーなんていなかったなと今更ながら思った。



ギターならスカルが弾いてくれる、

ドラムならコロネロが叩いてくれた。

ベースとキーボードなら、ヴェルデが、マーモンが、文句を言いながら来てくれた。

皆忙しければリボーンは全部出来たし、クラブに遊びに来ていた他のバンドのメンバーが手伝ってくれた。


元アルコバレーノのメンバー達。
ただ彼らの曲をカバーして歌うなら十分過ぎる面子だ。



「そっか…欲しいなぁ…俺のメンバー…」



一緒に創る仲間が欲しい。

一緒に成長出来る仲間が欲しい。



「作ろうかな…」



家庭教師に頼めば、クラブに貼紙くらい出来ないだろうか。どうだろう。



「っ十代目っ!!」


「ん??何獄寺君」


「その…っ自分、ピアノならそこそこ…やってたんで…その…」



キーボードなら…自信有ります…と言いつつ、徐々に萎んでいく獄寺君。

もしかしてこれは―



「…キーボードやってくれるの?」


「っ!!はいっ!!!」


ガバッと顔を上げ目をキラキラとさせる獄寺君。

思いがけずいきなり一人ゲットだ。


前に聞いた話では獄寺君はイタリアに居た頃、コンクールで最優秀賞を受賞した程の腕前らしい。

俺なんかには勿体ないけど、折角俺の為に弾いてくれるという獄寺君の申し出を断るつもりはまったく無い。



「ははっじゃー俺ドラムやってやろーか??」


「え??山本叩けるの??」


「テメェ簡単に言ってんじゃねぇぞ…十代目のバンドに半端な奴はいらねぇんだよ」


「友達に教えてもらって叩いたことあるから特訓すれば大丈夫だって」


獄寺君がまた山本を睨んだけれど、気付かないのか何なのか…山本は依然として笑って言う。

でも俺にも気になることがある。



「っ…だけど、山本部活だってあるだろ…??」



評価している人が居る、評価されている場所から、山本を連れ出すのは憚られる。


「―あー…まあな。でも休み無いわけじゃねーし…何より」


ふと目を逸らしてガシガシと頭を掻いた山本がまたこちらを見る。


「??」





「俺がツナとやりたいんだ」





「、え…」

「…」


山本の目が、さっきまでの明るい以外に他意の無い笑顔より何処か優しく見える。



「言ったろ?ツナの歌のお陰でMVPとれたって。そんなスゲー歌をもっと色んな奴らに聴かせたいと思うし、少しでもツナの力になりたいんだ」





駄目か??



とまた笑う山本に、結局俺は甘えさせてもらうことにした。









The word is like a declaration of love.


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あきゅろす。
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