狼少年とうさぎ
兎の隣の可愛い人気者
例えば秘密を隠した大きな箱を抱えて歩いていたとして。
その箱を開けたトコロを覗かれたなら。
箱に何の意味も有りはしない。
[兎の隣の可愛い人気者]
「…え、あの…やまも…ぇ??」
「ん??」
「テメェ…」
冷や汗をかいた俺と珍しく目を見開く獄寺君の間で、にこにことしている山本。
「あの…俺…山本の前で歌ったことあったっけ…??」
俺の記憶では山本がクラブに来ていたことは無い(はずだ)し、万一記憶違いで居たとしても俺はいつも顔を隠しているのでばれるはずは無い。…はず。
「ん?音楽のテストとかで歌ってたじゃん」
「…だっけ??」
「そーそー。あ、ツナその唐揚げうまそう。もらってい?」
「え、あ、うん」
にぱ。と笑って首を傾げた山本は、女子から逃げていて昼も食べていないのだろうと思ったら、思わず唐揚げを持った箸ごと差し出していた。
「サンキュー☆」
パクりと食いついた山本が、大型犬みたいで何だか可愛かった。
(…こりゃ人気者にもなるよなぁ…)
普段野球をしている山本はストイックな感じでカッコイイ。それなのにこんな人懐っこい行動をされたら女子なんかイチコロだろう。
とまあ何だかボケたことを考えていた俺の向かい側で固まっていた獄寺君がハッとした様に山本に食ってかかる。
「って何十代目の昼メシ奪った上にあーんしてもらってんだテメェうらや…ッじゃなくて、十代目の歌の上手さは学校の授業程度じゃ計れねぇんだよ!!!」
「わっ!?獄寺く…っ!?」
「あぁ、ピアノの伴奏も良いけどギターの方が俺も好きだぜ」
「え゛…」
「あ゛…??」
何とは無しに次々と山本に弁当を食べさせていた俺の手も止まる。
3個目の唐揚げを咀嚼し終わった山本はまたにっこり笑って、ポケットからごそごそと何かを取り出した。
「これ、俺のイメトレと精神統一用のBGM」
今回のMVPもこれのお陰なのな〜。なんて言う彼の手の平の上、酷く見覚えのあるそれは。
「違うクラスの奴でさ、バンドやってる奴が聴かせてくれたんだ。そいつは誰だか解ってないみたいだったけど…」
俺にしたら6年以上聴いてる声だし?
なんて…
「それは…ッ!!…十代目??」
「ぅ…」
「ツナどーした??」
「うわあぁあぁあぁリボーンの馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜!!!!!」
俺は恥ずかしさの余り屋上から逃げ出してしまった。
Lovely, popular person next to rabbit.
He acquired the place by making good use of the brain.
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