狼少年とうさぎ
その日死神が羊を創った
恥じらうツナの真っ赤な顔に、獄寺は更に言い募る。
「流石、元『アルコバレーノ』のリボーンさんのクラブで歌ってらっしゃるだけはあると言うか、次期オーナーと言うか!!」
「っ…!!」
そうだ。
ツナの知り合い、超有名バンド『アルコバレーノ』のボーカルだったリボーンがツナの家庭教師になったことが、そもそもの始まりだったのだ。
クラブのオーナーであるツナの祖父が、あまりにも成績が悲惨な孫の家庭教師に。と連れてきたのは、夕方の営業時間までは暇人なリボーン。
『死神』の愛称で呼ばれた元天才ボーカリストは、恐ろしくドSだった。
そして鬼畜だった。
[その日死神が羊を創った]
あまりのスパルタぶりに逃げ出そうとしたツナに、思いっ切り(呆れた様に)溜め息を吐いたリボーンが気分転換に連れ出してくれた先が、彼の経営するクラブだった。
ちなみにリボーンがツナをクラブに連れていった当時ツナは小6。12歳。
年齢制限は店長権限で無視した。
―初めてのクラブに、ツナは若干怯えつつも、興奮気味だった。
だから、あの悪魔―死神の囁きにも答えてしまったのだ。
『歌うか??―"アソコ"で』
『………え?』
初めてのステージは、興奮と緊張で覚えていない。
ただ、その日メインになっていたバンドの到着が遅れて、繋ぎの為に少しだけ、死神の掌に目元を隠されたまま歌った小さな子供に。
その歌声のあまりの心地良さに。
騒がしかったクラブが、眠りに就く様に静まった。
そして次に、大きな歓声を送った。
黒衣の男に抱かれる小さな白い子供は、
悪魔に囚われる哀れな子羊さながらだった。
その日から、死神に抱かれた少年は"Sheep"と呼ばれることになった。
The day god of death created the baby sheep.
Because he knew rabbit's singing voice.
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