カードキャプターさくら(桃矢×雪兎)
本当の気持ち
"雪兎さんは、お兄ちゃんが好きなんですか?"
さくらちゃんの真っ直ぐな問いに嘘はつけなかった
今まで桃矢に対するこの気持ちが何なのか、考えないようにしてきた
仲の良い友人の距離を崩さなければ、ずっとそばに居られたから
その関係まで失いたくなかった
自分は男で、ましてや人間ですらない
本来、そんな自分が桃矢のそばにいること自体が間違っているのだ
"好き"だなどと言う資格があるわけがない
それでも、一度自覚してしまったこの気持ちをどうしても押さえきれずに、一体どんな顔で桃矢に会えばいいのか分からなくて、つい避けるような態度をとってしまった
「なあ、なんで俺を避けるんだ?俺、何かしたか?」
桃矢の顔がまともに見られなくて少し俯く
「別に、避けてるわけじゃないよ。ただ、ちょっと忙しいだけで・・・」
「ゆき、何かあるなら言ってくれ。お前に避けられるのは結構辛い」
正面から真剣な眼差しを向けられると、目を逸らせなくなる
「桃矢−ーー」
「ゆき、俺はお前が大切なんだ。お前が何かに悩んでいるなら少しでも力になりたいと思ってる。それとも、俺じゃ頼りないか?」
「そんなことない!桃矢はいつだって僕の事を大事にしてくれて・・・そんな桃矢に僕はいつの間にかーー」
言いかけて、慌てて手で口を塞ぐ
その場を立ち去ろうとした雪兎の手首を桃矢が掴んだ
「続き、聞かせてくれよ」
「っ・・・そんな桃矢を・・・僕は、・・・好きになったんだ」
言い終えてぎゅっと目を閉じる
目頭が熱くなり、自然と涙がこみあげてきた
(・・・軽蔑した、よね?いきなり好きだなんて言われて)
「ごめん。今のは忘れてーーーっ!?」
突然唇を塞がれて言葉が途切れる
「と、桃矢!?」
突然の出来事に、雪兎の思考は停止した
「良かった。もしかして嫌われたのかと思った」
安堵の色を滲ませた桃矢の声を聞き、雪兎の表情も和らぐ
「軽蔑されても仕方がないって思ってた。気持ちを伝えたら、もう元の関係には戻れないだろうから、今までずっと自分の気持ちに気付かないふりしてた」
「バーカ。俺がお前を軽蔑なんかするはず無いだろ?」
「うん、ごめん。」
涙を拭いながら笑う雪兎の頭を桃矢はくしゃりと撫でて微笑んだ
「ゆき、俺もお前が好きだ。だからこれからもずっと俺のそばにいてくれ」
「うん。ずっと桃矢のそばにいる。大好きだよ、桃矢」
見つめ合って、二人どちらからともなく口づけを交わした
fin.
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