相棒(神戸×杉下、大河内×神戸)
覚悟
「ようやく覚悟が出来ました」
そう、杉下に告げた神戸は大河内とよく行く行きつけのバーに1人で来ていた
いつも飲むワインではなく、ブランデーを注文し、それを一口飲む
酒がいつもより苦く感じた
ぼんやりとブランデーが入ったグラスを見つめながら考える
ーーこれから自分はどうしていくのか、どうすれば償えるのか
「やはり、ここにいたか」
「っ、大河内さん・・・!」
予想していなかった大河内の姿に神戸は一瞬固まる
「どうしてここに?」
「さっき見かけたとき、どこか思いつめた様な表情をしていたのが気になってな」
「僕、そんな顔してました・・・?」
「少なくとも俺にはそう見えた。あながち間違いじゃ無かったみたいだがな」
(本当に、この人には敵わないなぁ)
神戸の言う覚悟″の意味を知りたかった
「お前は時々無茶をする・・・それも、自分自身を犠牲にするやり方で」
大河内にまっすぐに射抜くような視線を向けられ言葉に詰まる
しかし、すぐに笑顔を返す
「やだなぁ、大河内さん怖い顔して」
はぐらかそうとしてるのはバレバレだったが、大河内はそれに構わず続けた
「俺を見ろ」
その言葉に逆らうことができず、神戸は大河内の目を見つめる
「神戸、忘れるな。お前は一人じゃない。少なくともここにお前の事を大切だと思っている奴がいることを覚えておけ」
大河内のセリフがあまりにもクサくて神戸は思わず吹き出した
それを見て憮然とした表情を浮かべる大河内に神戸は柔らかく笑いかけた
「はい。肝に命じます」
これから先、神戸がどうしていくのかは分からない
けれど、覚悟を決めた神戸の少しでも助けになりたいと思った
一人で苦しまず頼って欲しいと思うのは俺のエゴだろうか
繕うことに慣れてしまった笑顔の奥に、時折見え隠れする不安と恐怖
それに気付いた時、側で支えたいと思った
「ねぇ、大河内さん?」
「何だ」
「ありがとうございます」
作り笑いではない笑顔に大河内も、ああ、と微笑み返した
そしてお互い目の前にあるワインを傾け小さく乾杯をしたのだった
fin.
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