BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
瀞霊廷大温泉物語(ドラマCD「花太郎の探しもの」ベース)


瀞霊廷には『瀞霊廷大温泉物語』と呼ばれる巨大温泉施設があり、傷を癒やしてくれる湯が湧いている

戦いで傷ついた死神の湯治場として建設されたそこは、男女日替わりとなっていて平隊士から隊長達まで様々な人が湯浴みに来る、皆の憩いの場となっていた

現世で言うところの"健康ランド"みたいなものだ





「なぁ京楽、久しぶりに大浴場に行かないか?」

仕事終わりに雨乾堂を訪れていた京楽に向けて浮竹が問う

「おっ、良いねぇ!たまには大きな風呂でのんびりしようか」

それぞれの隊舎にも風呂はあるのだが、温泉施設の方が大きく開放的なので、たまに二人でこうして誘い合わせて行くのだ

「じゃあ、支度してくるからちょっと待ってて」

京楽の言葉に分かった、と答えて浮竹も風呂の支度をする

「お待たせ、行こうか」

「ああ」

二人で並んで夜空の下をゆっくりと歩く

「何か良いねぇ、こういうのって」

「そうだな」

夜風に当たりながらのんびり歩き、他愛もない話をして笑う。そんな何気ない日々が幸せだと思った





温泉施設に着き、服を脱いで中に入るとそこには意外な人物がいた

「あっ、源柳斎先生!」

「げっ、山じい!?」

二人の声が同時に発せられる

「おお何じゃ、二人とも来たのか」

身体を洗っていた源柳斎を見つけて浮竹が近付いていく

「はい、久しぶりに大浴場でのんびりするのも良いなと思いまして」

「そうかそうか」

和やかに会話している浮竹と源柳斎を横目に、京楽は山じいがいたんじゃのんびり出来ないじゃないの、と心の中で密かに思った

「先生、お背中お流ししましょうか」

「おお、そうか、では頼む」

浮竹の申し出に源柳斎は十四郎は気が利くの、と言って表情を緩める

(相変わらず逞しい背中だな・・・俺とは大違いだ)

源柳斎の背中は昔と比べ随分と小さくなってしまったようには感じるが、その鍛え上げられた筋肉がついた背中はまだまだ現役なのだと物語っていた

その両肩には自分たちには計り知れないほどの覚悟と重責を背負っているのだろう

それに押し潰されないようにするためには、自らを鍛えて強くあり続けるしかない

(やっぱり先生は凄いなぁ・・・)

浮竹は源柳斎の背中を洗いながらしみじみ思うのだった





「さて、僕たちも湯船に浸かろうか」

髪と身体を洗い終え、二人で岩風呂へと向かうと湯船にはまだ源柳斎が入っており、浮竹と京楽はその近くへ腰を下ろした

「失礼します」

「うむ」

「山じい、相変わらず長風呂だねぇ」

自分たちが髪を洗い始めた時にはすでに入っていたから、かれこれ三十分近くは入っていることになる

「あんまり長湯しすぎてのぼせないようにね

「余計なお世話じゃて、そんなやわには出来ておらん」

源柳斎の言葉にそりゃそうか、と京楽は苦笑する

「そういえばお主たち、最近はどうじゃ?鍛錬を怠ってはおらんじゃろうな?」

「はい」

「んー、まぁね」

藍染、市丸、東仙の反乱が発覚した今、崩玉の覚醒までまだ時間があるとはいえ、護廷十三隊にはより一層の戦力の底上げが求められることとなった

「隊士達の力も少しずつですが上がってはいます。ですが、まだ戦力といった面では物足りなさが・・・それに俺自身もまだまだなのだと、先日の先生との戦いで思い知りました」

ルキア処刑の折、京楽と共に源柳斎と戦ったときにはその実力差をまざまざと見せつけられた

「あれは山じいが強すぎるんだって」

神妙な顔をしている浮竹とは対象的にあっけらかんとする京楽に源柳斎がスッと目を細める

「これ、春水。お主の日頃の勤務態度は聞いておるぞ」

「えっ?あ、いやー、・・・その・・・」

途端にしまった、と顔に出る京楽を見て浮竹がくすりと笑みを零す

案の定、源柳斎との会話は段々と日頃の京楽に対する勤務態度への小言へと変わっていった

「これ、聞いておるのか!春水」

「ちゃんと聞いてるって」

(さっきから3回目なんだけどな、その話・・・)

内心そう思うが、そんなことを言えばさらに小言は増えるだろうことは目に見えているので、京楽は真面目な顔を繕って黙って聞いている振りをする

浮竹も隣で同じ話を聞かされているので、同じくつまらないだろうな、と思ってチラリと横顔を見た

(あれ?浮竹・・・?)

「山じいちょっとタンマ」

「何じゃまだ話は終わっとらんぞ・・・」

途中で話を遮る京楽に、源柳斎はさらに小言を言おうと口を開きかける

「あちゃー、山じいの話が長いから浮竹のぼせちゃったみたいだよ?」

「何?」

京楽が続けた言葉に源柳斎は傍らの浮竹の顔を見た

薄暗いのでハッキリとは見えないが、確かに先程と比べて浮竹の顔は赤くなっており、僅かに呼吸も荒くなっているようだ

「・・・すいません、源柳斎先生、、、」

「いや、儂の方こそちっとも気付かなんだ。大丈夫か?十四郎」

「はい、・・・ご心配をおかけしてすいません」

困ったように笑みを浮かべる浮竹にいいから出るよ、と声をかけて京楽は立ち上がった

「じゃ、山じい、僕たちはもう上がるから」

「うむ、十四郎を頼んだぞ春水」

源柳斎に分かってるって、と返して京楽は浮竹の身体を支える

「とりあえず湯船から上がろうか、浮竹」

「ああ・・・すまない」

浮竹は肩を支えられながら、京楽に身体を預けるようにして湯船から上がった

「足元、滑らないように気をつけてね」

転ばないように注意しながら、ゆっくりと脱衣所まで歩かせ、近くにあった長椅子に浮竹を横にならせる

ふぅ、と息をつく浮竹の顔は明るいところで見ると真っ赤になっていた

「大丈夫かい?」

「ああ、少し熱くて頭がボーッとするが、大したことはない」

「とりあえず風邪引くといけないから身体にバスタオルかけておくよ?」

ふわりと乾いたバスタオルを浮竹の身体にかけ、額に水で濡らしたタオルを置いてやると浮竹の表情が和らいだ

「気持ちいい・・・」

「そう、良かった」

そう言って京楽が浮竹に優しく微笑みを向けたちょうどそのとき、脱衣所の扉が開き日番谷が顔を覗かせた

「やぁ、日番谷隊長」

京楽が日番谷に声をかける

「京楽、・・・と、浮竹!?」

だが、中に入った日番谷は赤い顔で横たわっている浮竹を見て驚いた

「ああ、日番谷隊長か」

浮竹は日番谷の姿を見てやあ、と片手を上げる

「どうしたんだよ、風呂で体調悪くなったのか?」

「ん、ちょっと湯当たりしちゃったみたいでね」

「何やってんだよ。大丈夫か?」

京楽の言葉に呆れたようにため息をつきながらも、日番谷は心配そうに浮竹を見る

「ああ、少し横になっていれば直によくなるさ」

力なく笑みを浮かべる浮竹に「それならいいが、無理するなよ」と返し日番谷はその場を後にした

「まったく、山じいの話は長くて困るね、本当に」

「先生に言われるようなことをしているお前も悪いんだぞ?自業自得だ」

お陰で俺までとばっちりを食らう羽目になったんだからな、と恨めしそうに言われてしまえば素直に謝るしかない

「ごめんね、今度甘味屋で好きなもの好きなだけ食べていいから」

「・・・それなら許す」

仕方ない、と言うように呟いた口調とは裏腹に浮竹の表情は明らかに嬉しそうで、京楽は思わず苦笑した





少し休んで回復した浮竹を今度は湯冷めしないように服を着せ、髪を乾かしてから休憩の出来る憩いの間に連れて行った

「もう少しここで休んでいこうか」

「そうだな、」

まだ少しぼーっとしている様子の浮竹に水を差し出す

「ほら、ちゃんとお水飲んで。脱水になっちゃうよ」

「ありがとう」

冷たい水が身体に染み渡るようでとても美味しかった

「ちょっとそこで体重測ってくるね」

浮竹が休んでる間することもないので、京楽は直ぐ側に設置されていた測定器で体重と体脂肪を測っていた

ピピピッーーー・・

音が鳴り、画面を見ると前回測ったときよりも体脂肪が増えていた

「あらら、体脂肪が上がってる・・・体重はあんまり変わってないんだけどねぇ」

「お前のは酒の飲み過ぎだろう。もう少し控えたらどうだ?」

浮竹が呆れた口調で京楽に向かって言う

「エエェそれは無理だよ、でも僕の身体のこと心配してくれるんだよね、嬉しいなぁ

京楽のふざけた態度にあのなぁ、とため息をつく

「身体には気を付けた方がいいぞ?折角の健康な身体を無駄なことで損なう必要はない」

浮竹はまだ少し覇気のない声でそう言う。やはり、浮竹が言うと言葉に妙に実感が籠もるのは仕方のないことだろう

「うん、気をつけるよ。僕が身体を壊したら君を満足させてあげられないからねぇ?」

「なっ、・・・・ば、莫迦!何言い出すんだ急に///」

いきなりそんな方に話が行くと思ってなかった浮竹は、意味を理解するなり真っ赤になった

「あれぇ?またのぼせちゃったのかい?」

楽しそうにニヤニヤしている京楽の頭をポカリと叩く

「痛っ!ひどいじゃないの、浮竹ぇ」

「知らん!」

今度は照れて赤くなっている浮竹を見つめながら相変わらず可愛い反応をしてくれるね、と京楽は口元を綻ばせたのだった





fin.



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