BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
君の側で(原作沿い ルキア奪還後)


『兄は一度部下を見殺しにしているではないか、二度も三度も大差はなかろう』

白哉に言われた言葉にざわりと心が波打った



『信じとった、意気は違えど歩む道は同じと。痛恨なり』

元柳斎に言われた言葉にチクリと心が痛んだ



『傲りがすぎるぞ浮竹、最初から誰も天に立ってなどいない。君も、僕も、神すらも』

藍染に言われた言葉にハッとした





(何が正しくて、俺は何のためにーーー・・)





「なぁに、どうしたの?元気無いじゃないの」

雨乾堂に休憩がてら来ていた京楽は浮竹の顔を見てそう言った

「いや、そんなことは・・・」

否定しようとする浮竹の顔を京楽は下からじっと覗き込む

「僕にそんな言い訳通じると思う?どれだけ浮竹のこと見てきたと思ってるの」

はぁ、とわざとらしくため息をついて京楽は浮竹から視線を外す

「まぁ、でも今回は色んなことがあって大変だったからね。皆それぞれに問題を抱えて、皆それぞれに傷を負った。身体にも心にも」

「そう、だな・・・」

「でも、浮竹は真面目だから色んな事を一人で抱え込みすぎ。ちょっとは僕にも分けなさいな。何のために一緒にいると思ってるの?」

「・・・ありがとう」

京楽の言葉に心が少し温かくなった

「なぁ、京楽、、、」

「うん?」

名前を呼んだだけで黙ってしまった浮竹に、京楽は優しい目を向けると、そのままパッと浮竹の両手を握った

「京楽!?」

「さて、一緒に山じいんとこでも行くかい?」

「えっ・・・?」

「あれ?違った?」

「いや、合ってるよ」

首を降って小さく笑う

(何でもお見通し、か・・・)

「久々に本気の拳骨かな?」

恐る恐るといった感じで浮竹を見上げる京楽に思わず笑ってしまった

「ああ、そうだろうな」

藍染の一件で有耶無耶になってしまったが、今回のことで元柳斎は自分たちに刃を向けた

四十六室の決定に異を唱え、あまつさえ双極を破壊するなどということは本来あってはならない事だ




信じとった、意気は違えど歩む道は同じと。痛恨なりーーー・・



元柳斎の言葉を思い出す

藍染の裏切りは後で分かったことで、あの時点では浮竹と京楽がしたことはただの反乱だった

だが、それぞれに"譲れないもの"がある

たとえ父と子のようにお互いを思っていても袂を別つ時があるのだ

自らの正義を貫いたことを後悔はしてなかった





「山じい、入ってもいいかい?」

「何の用じゃ」

中に入った二人に元柳斎がちらりと目を向ける

「まだ怒ってる?」

「だったらどうだと言うんじゃ?」

「拳骨ぐらいで済ませちゃ貰えないかなー?と」

茶化すように京楽が言うと元柳斎がピクリと眉を動かした

「ほう、いい度胸じゃ。ではお前たち、そこに直れ」

霊術院時代、嫌というほど身にしみて味わった元柳斎の拳骨を思い出し、浮竹と京楽はギュッと目を閉じる

ゴチン、と鈍い音がして浮竹と京楽は涙目だ

「久々の拳骨は痛かろうて、ちょっとは灸を据えれたじゃろ」

結局、浮竹も京楽も双極を破壊したことを謝ることはなかったし、元柳斎もそれを咎めることはしなかった

「山じい痛いよ、何も思いっきり殴らなくたって・・・」

「仕方ないさ京楽、これぐらいで済ませてもらったんだから文句言うな」

それから浮竹、京楽、元柳斎は3人でお茶を飲みながら懐かしむように霊術院時代の話をした

「じゃ、お邪魔しましたー」

「失礼します」

京楽に続いて部屋から出ようとした浮竹を元柳斎が呼び止める

京楽は気を遣って先に出て扉を閉めた

「何ですか?」

「十四郎、代行証の件は分かっておるな?」

「銀城の居所を探すため、ですか・・・」

以前の死神代行だった銀城空吾を思い出し浮竹が沈んだ声でそう呟く

そうじゃ、という元柳斎を一瞥し浮竹は分かりました、と告げ部屋を出た

「なに、代行証?」

部屋の外で待っていた京楽が聞いてくる

「ああ、やっぱり渡すことになるらしい」

浮竹は銀城のときにも代行証に監視機能を付けるのを最後まで反対していた

今回も本当ならそんなものを渡したくないはずだ

「一護くんに正直に言うの?」

「まさか、言わないさ流石に・・・でも、いつか俺の言葉に疑問を持って自ら気付けるように、その後の選択を彼が彼自身の選択で出来るようには伝えるつもりだ」

「浮竹らしいね」

「俺にはそれぐらいしかしてやれんからな」

誰よりも優しい彼はいつも自分の事より人のことばかり考えている

それが浮竹の良いところでもあるが、見ているこちらが心配になる

当の浮竹自身は辛いことも苦しいことも全部内に抱えて平気だ、と笑うのだから尚更だ

そして行き場のなくなった負の感情は、次第に浮竹の心と身体を蝕み如実に体調を悪化させる

京楽はそっと浮竹の身体を抱き寄せた

「京楽?どうした急に」

「んー?浮竹が倒れないように、ね」

「別に今は体調悪くないぞ?」

「知ってる」

「なんだそれ、」

「まぁ良いじゃないの」

本人でさえ気付かないその危うい心を隣で支えると決めた遠い昔

あの時から気持ちは少しも変わらないどころか以前よりもっと強くなった

「いつまでも僕は浮竹の側にいるよ」

「京楽・・・?」

不思議そうに見つめてくる浮竹の瞳に笑みを向ける

「さっ、じゃあ浮竹、今から酒でも飲みに行こうか」

「ぷっ、本当にお前はそればっかだな」

「良いじゃないの」



そんな何気ない日常が少しでも長く続きますようにーーー・・





fin.



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あきゅろす。
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