BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
ルキア処刑と双極の破壊(原作沿い ルキア処刑当日)


ルキア処刑の日、双極を破壊するため四楓院家に伝わる道具を携えた浮竹がようやく現れた

「よう、この色男。随分待たせてくれるじゃないの」

「済まん、解放に手間取った」

そう言う浮竹の横顔をじっと見ると体調が良くないのが分かる

双極を破壊する準備のために隊首会議には病欠と言って出席を控えたが、実際ここ最近は隊首会議にも出られないほど体調が悪かったのだ

つい昨日も微熱と言うには少々高めの熱があったはずだ

だが異例とも言える処刑の前倒しにより、体調が悪い中、無理をしてでも準備を進めざるをえなくなった





数日前、いつものように浮竹の部屋を訪れると、深刻な表情で俯く浮竹がいた

「どうしたの?体調悪い?」

「いや、そうじゃないんだ・・・ただ、・・・」

「ん?」

心配そうに覗き込む京楽の目をまっすぐ見て、浮竹は自分の気持ちを正直に伝えた

そして、京楽に向かって頭を下げる

「頼む、京楽。手を貸してくれ・・・もう二度と、大切な部下を失いたくないんだ」

滅多に人に頼み事などしない浮竹の真剣な頼みを断れるわけなどなかった

「大丈夫。君の気持ちは分かってるし、僕も手伝うから」

ルキアちゃんは死なせないよ、といえば浮竹は泣きそうに顔を歪めて「ありがとう、」と呟いた

「山じいには僕も一緒に怒られてあげるからさ」

「元柳斎先生、激怒するだろうなぁ・・・」

元柳斎の顔を思い浮かべて二人して苦笑いする





浮竹は海燕くんが死んだあの日からずっと自分を責め続けてる

表面上は平静を装っていても、僕は時折彼が夜中にうなされているのを幾度も見てきた

海燕くんやルキアちゃんにすまない、と夢の中で何度も謝るのだ



あの時、自分が止めていれば、一人で戦わせなければ海燕が死ぬことはなかったーーー

自分の体調が悪化しなければ、朽木に海燕を殺させることはなかったーーー



以前、浮竹が言っていた言葉を思い出す

(君は何でも一人で抱え込むから・・・)

それにしても、今回の一件は何かがおかしい

旅禍の騒ぎに便乗してとんでもないことが起きようとしているような、そんな気がする

(僕の悪い勘は結構当たるんだよね、、、)

ルキアちゃんの処刑、旅禍の侵入、瀞霊廷に渦巻く不吉な影、双極を破壊することへの重責、普通の状態でも精神的負担はかなりのはずだ

そこにきて身体の不調も重なればどれだけ辛いか想像に難くない

それでもなんとか処刑を止めようと必死になっている浮竹の助けになりたいと思う

(あんまり無茶しないでよ?浮竹・・・)






処刑日当日、四楓院家から持ち出した道具で浮竹と京楽は双極の破壊を実行に移した

そして、元柳斎との戦闘

もう二度と大事な部下を失いたくない、見殺しにしたくない

辛い身体を押してまで通した彼の想いを、その望みを叶えてやりたかった

だが、ある程度予想していたとはいえ、このタイミングでの元柳斎との戦いだ

浮竹の身体がどこまで持つか心配だった

まさか本気で殺しに来るとは思わないが、無事で済むとも思えない

勝ち目など万に一つも無いと知りながら、それでも自分の意志を貫くために刃を向ける

「元柳斎先生!」

浮竹の言葉にも聞く耳を持たない様子の元柳斎に京楽は内心舌打ちをした

(山じい、本当頑固なんだから・・・)

戦いが激しさを増していく

すると、虎徹勇音から地獄蝶を通じて一連の事件の詳細を伝える緊急連絡が入った





「・・・だってさ。どうする、山じい?こんなことしてる場合じゃないんじゃないのボクら」

軽い口調で言うが、内心は浮竹の体調が気掛かりで仕方なかった

現に先程から浮竹は肩で息をしており顔色もかなり悪い

(不味いな、早く終わらせないと浮竹が・・・)

相当無理をしているのは明らかだ

実際、浮竹はもうまともに立っていられるような状態ではなかった

極度の疲労と緊張で身体が悲鳴を上げている

一瞬でも気を抜いたら倒れてしまいそうだ

すでに限界などとうに越えていた




はぁ、と元柳斎が大きくため息をつく

「相分かった。この件は一旦保留じゃ」

その言葉に二人ともホッと息をつく

「良かった・・・」

安堵の表情を浮かべた浮竹だったが、それは次の瞬間苦悶の表情に変わる

「ぐっ・・・!ゲホッ、ゲホッ!ゴホッ!!」


ゴホッーーー!!!



急に咳き込みだしたかと思うと大量の血を吐いたのだ

「浮竹!!」

平衡感覚が崩れ、身体の感覚が無くなる

慌てて京楽が駆け寄って倒れる寸前で浮竹の身体を支えた

「京、・・・楽・・・っゴホッ!ゴホッ!!」

なおも激しく咳き込み、苦しそうに胸を掴む

口元を押さえた手の隙間から血がボタボタと溢れ隊服を真っ赤に染める

「すま、・・・ない・・・」

「喋らなくていいから!」

「っ・・・ゴホッ!ゴホッ!・・・ハァハァ・・・」

荒く息をつき、そしてまた苦しそうに咳き込むと大量の血を吐く

今までもたまに体調が悪いときに血を吐くことはあっても、これ程まで大量の血を吐いたことはなかった

浮竹の身体が小刻みに痙攣し、呼吸が徐々にゆっくりになっていく

「浮竹!しっかりするんだ!」

「・・・っ・・・」

意識はかろうじてあるが、すでに自分の身体を支えることはおろか呼吸さえもままならない状態だった

「十四郎を早く四番隊へ運ぶんじゃ」

流石に元柳斎も事態の深刻さを理解していた



意識が朦朧としていく中で、京楽の焦る声が遠くに聞こえた

(ああ、京楽・・・迷惑ばかりかけてすまない・・・)


(けれど、今度はちゃんと助けることが出来たよ)



「・・・あり、・・・が・・・と・・・」

かろうじて発せられた声は京楽の耳にちゃんと届いた

「っ、無茶しすぎだよ、君は・・・!」

蒼白な顔に閉じられた瞳、弱々しい呼吸はいつ止まってもおかしくない




浮竹が四番隊で治療を受けている間、京楽は処置室の外で浮竹の無事をひたすら祈るしかなかった

処置室から出てきた卯ノ花に駆け寄る

「浮竹は!?」

だが卯ノ花の表情は暗い

「出来ることはしましたが、正直なところかなり危険な状態です。今夜が峠かもしれません」

「っーーー!」

京楽はその言葉に愕然とし、そして恐怖した





病室に入ると点滴に繋がれ青白い顔で眠る浮竹の姿があった

酸素マスクから漏れる呼吸音がまだこの世に浮竹を繋いでいてくれる証だ

傍らに座りその顔を見つめる

「浮竹、戻っておいで。ルキアちゃんも生きてるんだ、君も生きなきゃ」

浮竹の手を握り語りかける

結局、その夜京楽は一睡もすることなくずっと浮竹の手を握り続けた

空が白み始めた頃、不意にピクリと浮竹の手が動いた

「浮竹!?」

慌てて立ち上がり京楽が声をかけると、ゆるゆると瞼が開きその瞳が京楽の姿を映す

「・・・京、楽・・・?」

かすれた声だったが、しっかりと聞き取ることができた

「ああ・・・良かった、本当に」

心の底から安堵した

「すまない、・・・心配かけて・・・」

申し訳無さそうに目を伏せる浮竹の顔を覗き込む

「君が死んじゃうかと思った」

サラリと髪を撫でて両手で頬を包み込む

「怖かった。すごく」

こんな京楽は初めて見る

いつも飄々としていて気持ちをあまり表に出さないが、それでも長い付き合いの中で彼の色んな表情を見てきた

だが、今の京楽はそのどれとも違っていた

"大切な者を失う恐怖"

それは自分も痛いほど味わった辛さだ

それを今度は自分のせいで、かけがえのない大切な友に味わわせるところだったのだ

「・・・悪かった」

浮竹は心から謝罪した

「もう、いいよ。君はこうしてちゃんと戻ってきてくれたんだし」

いつもの表情で笑う京楽を見てようやく浮竹も笑みを浮かべた

「京楽、本当にありがとう」

「水臭いね、僕と君の仲でしょ?」

おどけたようにウインクをする京楽に、そうだな、と言って浮竹は晴れやかな笑顔を向けた







fin.



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