BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
来たるべき日へ(原作沿い 藍染の死発覚後)


その日の早朝、十三番隊執務室に連絡用の地獄蝶がひらりと飛んできた

その内容は五番隊隊長・藍染惣右介の死を知らせるもので、執務室にいた隊士達に動揺が広がる

「そんな!藍染隊長が・・・」

本来なら隊長にすぐに報告しなければならなかったが、清音と仙太郎は顔を見合わせ頷いた。互いに思っていることは同じなのだろう

「隊長に知らせるのは後にしよう」

「ええ、そうね」

ここのところ高熱のため寝込んでいた浮竹は、昨日も夜中に咳が止まらなくなり、ようやく眠ったのは明け方近くになってからだった

二人はそんな浮竹の身体を慮り、いけないこととは分かっていながら昼まで報告を遅らせた





昼近くになり、ようやく清音と仙太郎は今朝受けた報告を浮竹に告げるため雨乾堂を訪れた

「隊長、ご報告があります。今、よろしいですか」

「ああ、構わないよ」

仙太郎の呼びかけに答える声はしっかりしていて、随分前に起きていたのだろうことが伺い知れる

「失礼します」

二人が中に入ると浮竹は「おはよう、二人とも」と笑みを向けた

その顔はずっと床に臥していたため、痛々しいほどにやつれてしまっている

「それで報告とは?」

「はい、それがーーー・・」

そこで清音と仙太郎は二人して今朝方受けた報告を浮竹に伝えた

「何!?藍染が殺された!?」

予想だにしていなかった報告に、浮竹はごほごほと咳き込みながら慌てて身体を起こす

「いつ、誰に、どうして・・・?」

「本日未明。犯人及び動機はまだ、不明とのことです」

「何故もっと早く起こさなかった?」

浮竹が咎めるような口調で尋ねると仙太郎が口を開いた

「自分は隊長のお身体が心配でした故、報告を遅らせました。どうか罰をお与え下さい」

「あっ、ズルいぞ小椿。隊長、自分もであります!」

「俺様が言ったこと真似すんな、清音」

「真似なんかしてないわよ」

歪み合う二人に浮竹は「もういい、」と静かに告げる

「えっ?」

「とにかく、こうしちゃいられん・・・」

浮竹は何かを考えるように一点を見つめていた

「お前たちはもう下がっていいぞ」

「・・・分かりました。失礼します」

仙太郎と清音が雨乾堂から出ていくのを見送った浮竹は、まだ熱でふらつく身体を無理矢理起こし隊服に袖を通した

「っ・・・はぁはぁ」

だが、目眩がして近くの壁に手を付き顔を歪ませる

熱もまだ下がりきっていないし身体も怠かったが、懺罪宮の方に感じる白哉の霊圧にただならぬものを感じ浮竹は支度を急いだ





十三番隊執務室に隊服を纏った浮竹が顔を出すと、それを見た仙太郎と清音が慌てて浮竹に駆け寄ってきた

「浮竹隊長!?寝てなきゃ駄目じゃないですか!」

「そうです、隊長!そんなお身体でどうするつもりですか!」

「大丈夫だ。それよりこれから懺罪宮に向かう」

「それって朽木さんが捕らえられてる・・・」

「懺罪宮のあたりで朽木隊長の霊圧を感じる。おそらく旅禍がそこにいるのだろう。お前達は危ないから着いてくるんじゃないぞ?」

「待って下さいっ、隊長!」

それだけ告げた浮竹はそのまま瞬歩で懺罪宮へと向かってしまった

(すいません、隊長・・・命令違反ですが、許して下さい・・・)

執務室に残された仙太郎と清音は顔を見合わせ、浮竹の後を追った





懺罪宮では白哉が今まさにルキアと花太郎に千本桜を放とうとしているところだった

「やれやれ、物騒だな。それくらいにしといたらどうだい、朽木隊長」

突然現れた浮竹が白哉の腕を掴む

「浮竹隊長・・・」

「オッス、朽木。少し痩せたな、大丈夫か?」

驚きに目を瞠るルキアと笑顔でルキアに挨拶する浮竹

白哉はそんな浮竹を冷めた目で見つめた

「どういうつもりだ、浮竹」

「おいおい、そりゃこっちの台詞だろう。こんなところで斬魄刀開放なんて一級禁止条項だ。いくら旅禍を追い払う為とはいえ、何を考えてるんだお前」

浮竹の言葉にも白哉は眉一つ動かさない

「戦時特例により斬魄刀開放は許可されている」

「戦時特例?旅禍の侵入がそんな大事になっているのか?まさか、藍染を殺したのも・・・」

そう言いかけた浮竹はこちらに向かってくる膨大な霊圧を感じ言葉を途切れさせた

「何だこの霊圧は・・・明らかに隊長クラスだぞ!?全く知らない霊圧だ」

そして、颯爽と目の前に現れた一護の姿に浮竹は思わず息を呑む

「白哉、あれは・・・誰だ・・・」

あまりにも似すぎている、今は亡きかつての副官に

浮竹の心境を察した白哉は静かに告げる

「無関係だ。少なくとも今、兄の頭を過ぎった男とはな」

だが浮竹にはどうしても無関係だとは思えなかった。けれど今はそれを確かめる術はない





結局、突然現れた夜一が一護を抱えて逃げ去ってしまったので、一護を捕らえることは出来なかった

浮竹は夜一が去っていった方向をぼんやりと見ている

「逃げられちまったか」

白哉は一護が居なくなった途端にもと来た道を歩き出していた

「おっ、おい、どこ行くんだ白哉。旅禍を捕らえるために来たんだろう?」

「興味が失せた。後は好きにしろ」

「やれやれ、相変わらず勝手な奴だよ」

浮竹は困ったように頭をかいた

そして白哉の霊圧に晒されていたルキアもまた、白哉の姿が見えなくなったのと同時に気を失って倒れてしまった

「白哉が消えて緊張の糸が切れたか、無理もない」

浮竹はそんなルキアを気遣いながらも自分がしなければならないことをするため近くにいるであろう仙太郎と清音を呼ぶ

「お呼びでありますか、隊長」

キリッとした顔で並んだ二人にふっと笑みを零した後、いつから着いてきていたのかを尋ねると最初からだと言う

「危ないから着いてくるなと言っただろう」

白哉の霊圧を感じた浮竹は、万一のことを考え三席の二人には待機を命じていた

「申し訳ありません。自分は隊長を尊敬している為、こっそり着いてこずにはいられませんでした」

ビシッと敬礼を返す仙太郎とそれに張り合う清音の相変わらずなやり取りに頭を抱えるが、このままでは埒が明かない

まぁいい、と二人のやり取りを遮り浮竹は仙太郎と清音にそれぞれ指示を出した

折角、連れ出されたルキアをもう一度牢に入れるのは忍びなかったが、勝手に連れ出すことは許されない

「仙太郎は朽木をもう一度牢に入れてやってくれ」

浮竹の言葉を聞いた花太郎がルキアを連れて行かせまいとして庇うと、その姿に仙太郎が怒鳴り声を上げた

「さっさと退け!俺様が好き好んでこんなことをすると思ってるのか、コラァ!」

それは、ここにいる誰もが思っていることだった

皆、ルキアのことが好きなのだ。みすみす処刑されるなど黙って見過ごせない

だが、同時に今この場でルキアにしてやれることは何も無かった

そして、浮竹は傷だらけになって倒れている岩鷲を見つめる

服に付いている紋様から志波家の者だということはすぐに分かった

志波家の者は海燕の一件で死神を憎んでいるだろう

それなのにこんなにボロボロになってまでルキアを守ろうとしてくれたことに浮竹は感謝した





仙太郎と清音に後処理を任せ、浮竹は一人で雨乾堂へ続く廊下を庵へと歩いていた

そして部屋に入った途端、糸が切れたように浮竹はガクリと膝を折った

本来なら動き回れるような体調ではないのだ

「いかん、身体が・・・」

布団に横になろうと思い立ち上がろうとするが、身体に力が入らない

意識が朦朧としかけていたところに、ちょうど京楽が訪ねてきた

「浮竹、戻ったんだね・・・ってちょっと、大丈夫!?」

浮竹の姿を見つけると慌てて抱えて上げて布団まで運ぶ

「助かったよ、京楽。布団まで歩けなくてな」

「全く君は無茶ばっかりして。懺罪宮に行ってたんでしょ?」

「何でもお見通しというわけか・・・」

「ルキアちゃんと会ったの?」

京楽の言葉にああ、と答えて懺罪宮での出来事を話す

もちろん、そこで会った人物についてもーーー・・
 
「似てるって、海燕くんに・・・?旅禍の子が?」

「ああ。直接話したわけじゃないし、短い間だったから詳しいことは何も分からないが、確かに彼は海燕に似ていた」

「へぇ、僕も会ってみたいね」

京楽はその海燕に似ているという旅禍に少しだけ興味を唆られた

「それでこれからどうするんだい?」

「とりあえず四十六室に掛け合ってみるつもりだ。もし、それで通らなければ・・・」

「通らなかったらどうするつもり?」

「それは・・・」

浮竹は迷った。ここで京楽に言えば、きっと巻き込んでしまう

だが自分一人ではやれることに限界があるのも分かっていた

「ねぇ、浮竹。何のために僕がいると思ってるの?君一人で何でも抱え込まずに、もっと頼りなさいよ」

「京楽、・・・ありがとう」

京楽の言葉に浮竹の決意は固まった

「今はまだ言えないが、もしもの時はお前の力を貸して欲しい」

「うん、分かった」

浮竹と京楽は近いうちに来るかもしれない大きな波に逆らう決意を共に心に誓った





fin.



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