BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
溝(原作沿い ルキア現世駐在任務前)


ルキアの空座町への1ヶ月間の駐在任務が決まった

もともとルキアに経験を積ませたいと思っていた浮竹はルキアを現世任務へと推薦していたのだが、この度、空座町の担当に欠員が出たらしく晴れてルキアが担当に選ばれたのだった





浮竹はこのところの体調が優れず、昨日まで熱があり臥せっていたのだが、初のルキアの駐在任務ということもあって見送りのために隊舎を訪れていた

顔を覗かせると、慌てた清音に「駄目ですよ、寝てなくちゃ」と言われたが、それには「今日は調子が良くてな、」と笑顔を返しルキアの前に立つ

「白哉に報告は?」

「あっ、はい、まだ・・・いえ、・・・朽木隊長はきっとこの程度のことで、いちいち報告に来るなと仰るでしょう。だから報告はせずに立とうと思います」

ルキアがそう言って俯くのを浮竹は憂いを帯びた目で見つめる


ーーーああ、この子は白哉がどれほど自分を大切に思っているか知らないまま、白哉との間に壁を作ってしまった

気持ちは思っているだけでは伝わらない

もっとお互いが自らの気持ちを言葉にし、相手に伝えていたのならこの二人の関係は変わっていたのだろうか・・・


浮竹はその言葉に「そうか、」と返すとルキアの前に屈み、目線を合わせて優しく声をかけた

「分かった。お前がそう思うなら、それでいいだろう。白哉には俺から伝えておこう。安心して行って来い」

ルキアの表情が僅かに柔らかくなった

「はい!」





ルキアが現世へと立った後、浮竹は白哉のいる六番隊隊首室を訪ねていた

「白哉、今大丈夫か?」

「浮竹か、構わん。入れ」

白哉は文机に向かっていたが、浮竹が部屋に入ると筆を置いて顔を上げた

「珍しいな、兄が私の元をわざわざ訪ねるなど」

「朽木が今日から現世への駐在任務に行くことになったんだ」

そうか、と答える白哉の表情からは何も読み取れない

(大切に思ってる事は間違いないんだがな・・・)

浮竹はルキアの十三番隊への入隊が決まったときのことを思い出す




+++++


ルキアの十三番隊入隊が決まった直後、白哉は個人的に浮竹の元を訪れた

「浮竹、ルキアをよろしく頼む」

「ああ。朽木は俺のところで、ちゃんと面倒を見るから安心しろ」

訪ねてきた白哉に浮竹が笑顔を返すと、白哉は少し言いにくそうに言葉を続けた

「それと・・・こんなことを頼めた義理では無いのだが、ルキアを席官にはしないでくれぬか」

「えっ?」

予想もしていなかった突然の申し出に浮竹は驚く

「席官になればそれだけ任務に出る回数も増え、危険も増えるであろう。だが、ルキアはまだあまりにも未熟だ。私は緋真の為にもルキアを死なせたくは無い・・・頼む、浮竹」

白哉は浮竹に向かって頭を下げた

「白哉・・・」

浮竹は、誰かのために頭を下げる白哉を見て、とても嬉しく思い、そして愛する妻の忘れ形見を必死に守ろうとする姿に胸が熱くなった

朽木家を何よりも大切にする白哉が、ルキアを養子に迎えるのにどれほどの苦悩と葛藤をし、どれほどの無理を押し通したか分からない訳ではなかった

「分かったよ、」

浮竹は白哉のことを慮り、その頼みを了承した


+++++





(もっと素直になれればいいのに・・・)

浮竹は白哉の気持ちが、あの頃から変わってはいないことを知っていた

「なぁ、白哉」

「何だ」

「朽木にもっと優しくしてやることは出来ないのか?」

「余計なお世話だ」

「はぁ・・・お前、いつか朽木との間に取り返しの付かない溝が出来てしまうぞ?」

自分が口を挟むことではないのかもしれないが、幼い頃から見守ってきた白哉と、自分の部下になったまだ入隊して間もない朽木の二人が、心の底では大切に思い合ってるのに、それが相手に伝わらず溝が深まっていってしまうのは悲しすぎるではないか

「年長者の意見もたまには聞いとくもんだぞ?」

「用が済んだなら出ていってくれぬか」

取り付く島のない白哉に浮竹はため息をついて分かったよ、と言って部屋を出た

いつかこの二人の関係にも変化が訪れ、穏やかな風が吹けばいいと、浮竹はそう願わずにはいられなかった



そして歯車は回り始める、

誰も予期しなかった方向へと向かって

ゆっくりと、しかし着実に・・・


『朽木ルキア』が『黒崎一護』と出会うまで


          あと、もう少しーーー・・





fin.



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