BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
せめて良い夢を(原作沿い 海燕死後)


隊長、ありがとうございました
俺を戦わせてくれてーー・・




海燕が死ぬ間際に残した言葉を思い出し浮竹はきつく目を閉じる

己の決断が間違っていたとは思わない

いや、思ってはいけない

それは海燕の死を侮辱するに等しいことだ

だが、と浮竹は重く息をつく

(俺の判断が海燕を殺した・・・)

「・・・海、燕・・・」

副官としての彼は優秀で、皆からの人望も厚く、とても気持ちの良い男だった

隊長を任せよう、と本気で思っていたのだ

海燕に合わせて仕立てられた隊長羽織が、その役目を果たすことなく部屋の隅に置かれている

失ったものの大きさを改めて痛感する





どれぐらいの時間が経ったのだろうか、ふいに声が聞こえた

「失礼するよ、浮竹」

そう言って京楽が部屋に入ってくる

「京楽・・・」

顔を上げた浮竹を見て京楽が目を顰める

「随分と顔色が悪いね、少し横になって休みなさいな」

だが浮竹は小さく首を降る

「大丈夫だ、」

(どこが"大丈夫"なんだかねぇ・・・)

傍から見ても今の浮竹は心も身体もボロボロだった

大切な部下を守ることも、止めることも出来ず、まだ入って日の浅いルキアに重い十字架を背負わせた

「俺は・・・隊長、失格だな・・・」

長い沈黙のあと、突然ヒュッと音が聞こえたかと思うと浮竹が苦しそうに胸を掴んだ

「っ・・・ハッ・・・ハッ、ハッ・・・くっ・・・!」

「浮竹!?」

過呼吸を起こしているのがすぐに分かった

「浮竹!落ち着いて、ゆっくり息を吸って」

だが京楽の言葉も聞こえていないようで、短い吐息だけが浮竹の口から吐き出される

京楽は逡巡したあと浮竹の身体を自らの方へ抱き寄せた

「浮竹、少し我慢してね」

そう言うと、京楽は自らの口で浮竹の口を塞いだ

驚いた浮竹の目が見開かれる

それと同時に浮竹は浅く苦しかった呼吸が元に戻っていくのを感じた

合わせられた京楽の唇はとても温かく、何故だかとても落ち着いた





「大丈夫?」

「すまない、」

落ち着いた浮竹を布団に寝かせ、そっと手を握る

「君のこんな姿を彼が望んでると思うかい?」

いつも明るく輪の中心にいた海燕を思い出す

病で臥せりがちなのに、時々無茶をする自分の面倒を文句を言いながらも優しく見てくれた

隊長!ーー・・

海燕の声を、笑顔を思い出し、涙が零れる

京楽はそんな浮竹の髪を優しく何度も梳いていた

「そう自分を責めなさんな、海燕くんも君に礼を言っていたんだろう?」

お前さんは彼の誇りを守ったんだよ、と京楽が言う

「京楽、・・・ありがとう」

涙に濡れた瞳で、それでも懸命に笑みを浮べようとしている浮竹の顔が綺麗だと思った

「今はゆっくりお休み、眠るまで付いててあげるから」

そう言うと安心したように浮竹は目を閉じて小さな寝息を立て始めた

「お休み、浮竹」

せめて良い夢を見れることを願い、京楽は浮竹の額にそっとキスをしたのだった





fin.



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