BLEACH(京楽×浮竹、海燕×浮竹、白哉×浮竹)
調べ物(アニメ沿い バウント篇)
バウントが尸魂界に攻めてきてから、浮竹は一人内密に図書館でバウントのことを調べていた
今はとにかく時間が惜しい
源柳斎先生には申し訳ないが、隊首会も「体調不良を理由に休むと伝えてくれ」と京楽に頼み欠席をした
そして手がかりを探して図書館に籠もっていた浮竹は、ようやく膨大な資料の中から目的の本を見つける
「これは・・・!」
それを読み進めていくが、もともとあまり体調が良くないところに重ねて埃っぽいところにずっといたせいで咳が止まらない
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!・・・ハァハァ・・・ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ!」
熱が上がってきた気がするが、それでも調べることを止めるわけにはいかなかった
(何とか間に合えばいいが・・・)
すると、そこにふらりと京楽が顔を出した
「やれやれ、仮病使ってる奴が本当に咳してちゃ駄目でしょう」
心配の中に少し咎めるような色を滲ませた声が聞こえる
浮竹の周りに舞う埃を息を吹きかけて払うと京楽は「何か分かったかい?」と浮竹の見ている本を覗き込む
「多少はな。だが、なにしろ資料が膨大で・・・」
浮竹は疲労の色を隠すように小さく息をついた
「で、敵はなんと?」
狩矢は瀞霊廷を破壊するために浄界章を探していたのだ。手に入れた今、すぐにでも瀞霊廷を破壊する危険性があった
「一日の猶予を切ってきた」
京楽はいつもの様に間延びした声で、明日になったらボォン、と言いながら大げさに手振りを付ける
浮竹はそれに対してそうか、と表情を曇らせた後、今しがた自分が見ていたページを京楽にも見えるように広げる
「これを見てくれ、浄界章の概略だ。著者は蘭島」
「何でこんなものが?」
図書館にそんな重要な資料が置いてあったことに驚いていた京楽だったが、浮竹は逆に蘭島という人物の機転に感心していた
「人は秘密を知りたがる。それがありそうな場所には特に入りたがる。そういう場合、最も狙われやすいのが正規の情報保管施設だ。だが直接書物化して大量の書籍に紛れ込ませれば案外見つからない」
浮竹の言葉に京楽は確かに、と納得する
浮竹は以前に日番谷と図書館に来たときにバウントに関する書物が消えていたのを思い出し、もしかしたら図書館の方に重要な書類があるのではないかと探していたのだ
結果としてその考えは正しく、一ノ瀬によって処分されずに取り残された浄界章に関する記述が残っていた
「それで?」
「その浄界章の書物を見つけたのは偶然だ。だが、他にも何かあると思う」
「他に?」
「肝心なところが書いていない。その著者は情報をいくつか分散して書き、この膨大な書物の中に紛れ込ませている」
「あっ、ええっ!?これ全部探すのかい??」
浮竹の言いたいことがすぐに分かった京楽は途端に情けない声を上げた
明日までまだ時間はあるからな、と言って浮竹は再び本に視線を戻す
京楽が「あー、」とか唸りながらどうしようかと思案していると、浮竹はさも当然とばかりに続ける
「すまないな、手伝いに来てくれたんだろ?」
浮竹は昔から京楽に対しては遠慮がなく、結構強引な部分がある
そして一度決めたらそれを曲げない頑固さも持っていた
「やれやれ、・・・どーいたしましてー」
京楽は諦めたように投げやりな口調でそう告げると本を一冊手に取り眺め始めた
「それにしても、涅隊長のあれ何とかなんないかねぇ」
ふいにポツリと京楽がため息混じりに呟いた
「何かあったのか?」
「今回のバウントの総括、日番谷隊長に一任されたじゃない?なのに易々と瀞霊廷へ侵入されたもんだから責任を取れって、まるで鬼の首取ったみたいに皆の前で日番谷隊長を責め立てるんだよ」
「そんなっ・・・それじゃ日番谷隊長があんまりだ・・・!」
「でしょ?涅隊長も今回のことで面子を潰されて、だいぶ苛立ってるみたいだからその鬱憤晴らしもあるんだろうけど、流石に見ていられなくて横から口挟んじゃった。どうして相手の気持を汲んでやれないんだろうね、涅隊長は」
管理しているデータを盗まれたのも、それを改ざんされ滅却師に力を与えるよう誘導されたのも元々は涅の管理不足と言えなくもないのだ
なのに、それを棚に上げて日番谷ばかりを責めるのはお門違いだ。思わず嫌味の一つも言いたくなる
「日番谷隊長は?」
「やっぱり責任感じて落ち込んでるみたいだけど、彼は今やらなければならないこともちゃんと分かってる。日番谷隊長なら大丈夫だよ」
その言葉に浮竹はそうか、とホッとしたように笑みを見せた
そうしてしばらくパラパラと本に目を通していると、また小さく浮竹が咳き込み始めた
「大丈夫かい?」
隣に屈んで背中を擦ると、発熱しているのがすぐに分かった
「浮竹、熱があるじゃない」
「コホッ、・・・これぐらい平気だ・・・ゴホッ、ゴホッ」
苦しそうに咳き込む姿に一刻も早く布団で休ませてやりたかったが、明日までという猶予がない状況ではそうも言ってられない
浮竹自身もそれを望まないであろう
自らの体調が悪化するのも厭わず、尸魂界をバウントから守るために解決の糸口を必死で調べている浮竹を、傍らで見守ることしか出来ないことが歯痒かった
「じゃ、急いて調でべちゃおうか」
そう言うと京楽は普段の仕事ぶりからは想像出来ないようなペースで本を調べていく
そんな京楽をちらりと見て浮竹はため息をついた
「お前はやればできるのにいつもサボってるから伊勢に怒られるんだぞ?」
「いつも真面目にやってちゃ疲れちゃうじゃない。僕は適度にオンオフを使い分けてるの」
「お前のはオフが8割ぐらいだろう」
「おやおや、手厳しいねぇ」
そんな会話をしながら、二人ともただページを捲り文字を目で追うのを繰り返す
時間だけが刻一刻と過ぎていった
それからも度々、本を捲る合間に何度か咳を零していた浮竹だったが、しまいには本を落としてごほごほと激しく咳き込み出してしまった
「ちょっ、浮竹!」
京楽はこれ以上はまずいと思い、雨乾堂に戻ろうと浮竹を抱きかかえようとしたのだが、浮竹はその手をやんわりと押し退けた
「ゴホ、ゴホッ!・・・ハァハァ・・・大丈夫だ・・・もう少し・・・っ・・・ゴホッ!ゴホッ!」
「これ以上は駄目だよ」
「っ頼む、京楽・・・もう少しだけ・・・ゴホ、ゴホッ」
浮竹の強い望みに京楽の方が折れた
「浮竹・・・・・・分かったよ。本当に、もう少しだけだからね?」
ああ、と浮竹は安心したように笑みを見せる
「とりあえず、お水と何か食べるものと解熱薬持ってくるから少し待ってて」
そう言ってその場を後にした京楽はしばらくして水と解熱薬と握り飯を持ってきた
浮竹の性格からしておそらくほとんど飲まず食わずで資料を調べていたであろうことが容易に想像出来たからだ
「ありがとう、ちょうど腹減ってたんだ」
「ちゃんと食べなきゃ駄目だよ。とりあえず、戻ったついでに今まで分かったことを山じいに伝えるよう七緒ちゃんに言っといたから」
水を飲んで一息ついた浮竹はその言葉に苦笑を漏らす
「仮病使ったのバレただろうな」
「結局、君のは仮病じゃなくなっちゃったじゃない。嘘は言ってないよ」
それに報告を聞いた源柳斎はこのまま資料調べを続行することを二人に命じるだろうということも想像がついた
資料探しはまだ半分以上残っている。浮竹の身体が心配だが今は時間が無いのでそうも言っていられないだろう
(これ以上体調が悪化しなきゃいいんだけど・・・)
京楽は隣に座る浮竹をちらりと横目で見た
簡単に食事を済ませ、資料探しを再開してしばらくしたころに浮竹が「厠に行ってくる」と告げて席を立った
戻ってくるのが少し遅いな、と心配になった京楽が様子を見に行くと、浮竹は途中の壁によりかかって苦しそうにしていた
「浮竹!大丈夫?」
「っ、京楽・・・大丈夫だ。少し目眩がしただけだから」
額に手を当てると熱はなく、少しひんやりとした
「薬が強く効きすぎてるのかな・・・」
早い段階で解熱薬を飲んだ為、思ったより急激に熱が下がっている。これでは逆に辛いだろう
「浮竹、少し仮眠取ろうか」
「けど、時間が・・・」
「うん、だから少しだけ。ね?」
浮竹を誘導してソファーが置いてある広いスペースで横にならせると、僅かに顔を歪めた浮竹が深く息を吐く
「・・・すまん、一時間したら起こしてくれ」
「分かったよ」
浮竹が眠ったのを確認すると京楽は再び資料探しを再開した
時折、休憩がてら浮竹の様子を見に行きはするが、結局京楽が浮竹を起こしたのは三時間ほど経った後だった
「浮竹、大丈夫?起きれそう?」
「ん、ああ。・・・今、何時だ・・・?」
時計を見ると自分が寝てから随分立っている
「京楽!どうしてもっと早く起こさない・・・!」
「だって、君の寝顔見てたかったんだもん」
浮竹が気にしないようにそう言っているのは見え見えだったが、お陰で随分と身体は楽になった
「すまない、ありがとう京楽。寝たお陰で、随分身体が楽になった」
「そうかい、それは良かった」
顔色もだいぶ良くなっているので、この分なら大丈夫そうだと思い京楽は安堵した
「お前は仮眠取ったのか?まだなら少し寝てろ」
「ん、じゃそうするかね」
そう言って京楽もソファーにごろんと横になると、固まった身体がポキポキと音を鳴らした
「やっぱりこういうのは性に合わないねぇ」
京楽は一人そう呟き目を閉じると、微睡みの中に身を委ねるのだった
fin.
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