鋼の錬金術師(ロイ×エド)
君に触れたくて

その日、エドワードがロイの執務室に行くと中には沢山の書類を抱えたリザがいた


「中尉、大佐は?」


「あらエドワード君、大佐なら居ないわよ。また仕事をサボってどこかに行ってしまったみたいなの」


「またかよ…んじゃ俺、大佐探して仕事するように言っとくよ」


溜息を付くリザにエドワードはそう言った


「そうしてくれると助かるわ、ありがとう」







エドワードはロイを探す為に屋上へと向かった


きっとこんな天気の良い日は屋上でのんびりと…なんて考えてるに違いないと思ったからだ


果たして予想に違わず、ロイは屋上のベンチで気持ち良さそうな寝息を立てて眠っていた


「おい、司令官がこんなとこでサボってんじゃねぇよ。中尉が困ってただろうが」


「ん…ああ、鋼の。お帰り」


そのまま抱きしめようとしたロイの手をエドワードは振り払った


「仕事が片付くまで俺に触れるの禁止!」


「なっ!?」


思わず言葉を失うロイ


それもそのはず、ロイが溜め込んでいた書類はとても2、3日で終わらせられるような量では無いからだ


「ちょっと待て鋼の!」


「ダメ、待てない。ちなみに明後日には発つから」


んじゃ、と言って去っていくエドワードをロイは呆然と見送った







翌日、司令部では机に向かって一心に働くロイの珍しい姿が見られた


「大佐、頑張ってるな」


「昨日からずっとあの調子だもんな」


ハボックとブレダが話をしていると、丁度そこへエドワードがやって来た


そこで2人は、昨日大佐と何があったのかを聞いたのだった


「さすが大将、まさしく鶴の一声ってやつだな」


話を聞いたハボックが感心する







3人が楽しそうに話しているのが聞こえたロイは執務室を出てエドワードの側に立つ


「鋼の」


肩に手を置いたら思いきり睨まれた


「何だよ?」


「あ、いや、何でもない」


声も明らかに怒気を含んでいた


「仕事終わったのかよ?」


「いや、まだだが…」


「ならとっとと仕事しろ。それともこのまま俺が出発してもいいならいいけど」


エドワードの言葉にロイが慌てる


「そっ、それは勘弁してくれ!何とか明日の昼過ぎまでには終わらせる」


執務室に戻っていくロイの後ろ姿を見送りながらエドワードは内心呟いた


(ちょっと可哀相だったかな…いや、でも元はといえば大佐が悪いんだし)







朝、目が覚めたロイは熱っぽさを感じた


額に手を当ててみるとやはり少し熱があるようだ


しかし、一刻も早く仕事を終わらせたいロイは仮眠室から執務室に直行し、仕事をし始めた


(明日には鋼のはまた旅に出てしまう、何とか今日中に終わらせなければ…)


そう思いながら必死に山積みにされた仕事をこなしていく


徐々に熱が上がってきているようだったがそんなものに構ってはいられなかった







司令室の自分の机に資料を取りに来たロイは、そこで初めてエドワードが来ていることを知った


側を通るとき、声を掛けようと上げかけた手をロイは少し寂しそうな表情で下ろす


また拒絶されるのが怖かった…


そのまま執務室に戻ったロイはため息を一つついた後、再び机に向かって仕事を片付け始めた


書類に目を通しているのだが、視界がぼやけて思うように進まず焦りと苛立ちばかりが募っていく


落とした書類を拾おうと屈んだ瞬間、ロイの身体は傾き床にそのまま倒れ込んだ







(…まぁ、ここんとこ大佐も頑張ってるみたいだし、許してやるか)


「大佐ー、しょうがねぇからそろそろ許してや…」


部屋に入ったエドワードは床に倒れているロイを見て愕然とした


脳裏にあの日の記憶が蘇る――‥


玄関を開けたら家の中で倒れていた母


顔色が悪く揺すっても起きなくて…


またあの時みたいに失うんじゃないかと思ったら怖かった


「大佐!しっかりしろよ、大佐!!」


触れたロイの身体が熱い


わずかに開いた唇からは浅い呼吸が繰り返されるばかりだ


「大佐っ、おい!目開けろよ…ロイ!!」


エドワードの呼び掛けにロイがうっすらと目を開けた


「…鋼、の…?」


ロイの手がわずかに持ち上げられるが、すぐに悲しそうな顔をして手を降ろした


エドワードがそれに気付き、ロイの手をしっかりと握る


ロイは一瞬驚き、そして柔らかく笑った


「私が悪いのは分かっているが…やはり、君に避けられるのは…辛い」


漏らされたロイの言葉に、エドワードはここ数日の自分の態度を振り返る


肩に置かれた手を乱暴に振り払ったり、わざと冷たい態度で接した


そのせいでコイツをここまで追い詰めてしまった


「…ごめん」


やっとのことでそれだけ言うと、ロイはエドワードを優しく抱きしめた


「君が謝ることはない…悪いのは私なのだから」


その後病院に運ばれたロイは極度の疲労と睡眠不足のため、40度近くの熱を出し丸2日眠り続けた







「…中尉…?」


「あ、気がつかれましたか?」


「私は…」


「高熱を出して2日も眠っていらしたんですよ」


「2日…?それじゃ鋼のはもう…」


行ってしまったのか、と少し寂しく思う


「エドワード君なら…」


リザが言いかけたのと同時に病室の扉が開いた


「よっ!大佐、気分はどうだ?」


そこに現れたのは金色の子供


「鋼、の…どうして?」


もう行ってしまったのかと思っていたよ、と言えばエドワードは少し照れ臭そうにそっぽを向く


「今回はアンタも頑張ったみたいだから大佐の風邪が治るまではこっちにいてやるよ。…飯食いに行くんだろ?」


エドワードの言葉にロイは思わず笑みを零した


「ありがとう、エドワード」


耳元でわざと低い声でささやくと、途端に耳まで赤くなる


「もうサボって中尉困らせんなよ?」


「ああ、気をつけるよ。また君に“触れるの禁止”などと言われたら困るからな」


ロイはそう言ってエドワードに口付けた


「…馬鹿///」


その後、ロイは久方ぶりにエドワードの身体を思う存分堪能したのだった――‥







            fin.





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