鋼の錬金術師(ロイ×エド)
隠し事



グサッ――‥


「ぐっ…」


「大佐っ!!」


それは本当に僅かな油断だった


取り押さえた犯人がナイフを隠し持っていたのに気が付いたのは、迫ってくる刃がキラリと光る瞬間で…


ギリギリで身を引いたものの、避けきれず腹を数センチ刺されてしまった


「大佐!大丈夫っスか!?」


「っ…大したことは無い…」


「すぐに病院に行きますんで、あとのことは憲兵にでも任せて車に乗って下さい」


「ああ、分かった」







ハボックの車で近くの病院に向かったロイは、手当てを受けた後、司令部に戻った


「大佐、今日はもう帰った方がよろしいのでは?」


「いや、この忙しいのにこれぐらいのことで休むわけにはいかんだろう」


傷の程度は大したことないとはいえ、やはりじっとしていてもズキズキと痛む


時折休みながらも、仕事をこなすロイに流石の副官も仕事の量を加減してくれているみたいだった







ガチャッ――‥


「よっ!大佐」


突然開けられた扉から覗く金色に思わず顔が綻ぶ


「やぁ鋼の、久しぶりだな」


「ん、報告書」


渡された報告書を受け取り内容を確認する


「今回も収穫は無し、か。それで今度はどうするんだね?」


ロイの方をじっと見たまま何も答えないエドワード


「鋼の?」


再度呼び掛けるものの返事が無い


すると、何を思ったのかロイの元に来てシャツのボタンに手をかけた


「ちょっ、鋼の!?積極的なのは結構だが、こんなところで昼間からはちょっと…」


「黙ってろ。無能」


怒気を含んだエドワードの声音にロイは口をつぐむ







「やっぱり」


脱がしたシャツの下には包帯が巻かれていた


「何で黙ってたんだよ?」


「君に心配を掛けたく無かった」


「だからって…」


「言えば君はそうやって辛そうな表情をするだろう?それに、見た目ほど酷くは無いからね」


大人の見栄だよ、とロイは苦笑する


「鋼の」


ロイが優しく呼ぶとエドワードが抱き着いてきた


「すまない。結局は君に心配をかけてしまったな」


そう言いながらしっかりと抱きしめると、僅かに震えているのが伝わってきた


きっとこの子は大切な人を失うことを極端に恐れているのだろう


「すまなかった、エドワード」


「…今度からはちゃんと俺に言うこと」


エドワードが顔を上げてロイを見る


「ああ、分かった。だが次からは怪我をしないよう気を付けるよ」


ロイはそう言って微笑むとエドワードに優しく口付けた――‥





            fin.




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あきゅろす。
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