鋼の錬金術師(ロイ×エド)
星降る夜に(ロイエド吸血鬼パロ) ※R18

俺がソイツと会ったのはある星が綺麗な夜だった


眠れないときはいつも近くにある丘に来て寝転がって空を眺めていた


人が誰もいなくて、しんとした中で空を見ていると自分の悩みが酷くちっぽけなことのように思えるんだ


その日も俺はいつものように寝転んで空一面の星を見上げていた







「こんな所で寝ていると風邪を引くぞ」


いきなり上から声がしたので振り仰いでみれば、漆黒の髪と瞳を持った男が自分を覗き込んでいた


「アンタ誰?」


「私はロイだ。それより子供がこんな時間に一人で出歩くのは危険だよ?」


「誰が子供だって!?俺はこんでも20歳越えてんだよ!」


「はは、そうかすまない、てっきり背が小さいので学生だとばかり…」


「〜〜〜!!」


(コイツ、人が気にしてることをはっきり言いやがって…ムカツク!)


それが第一印象だった







「何を見ていたんだい?」


「星。ってか何勝手に人の隣に寝転んでんだよ!」


「いいじゃないか。ほぉ、確かにとても綺麗だな」


ロイが空を見て感嘆の声を上げる


「だろ?ここ、俺の特等席なんだ」


嬉しそうに言うエドワードにロイも微笑む







「さて、そろそろ帰りなさい。いくら20歳を過ぎてるとはいえ、君みたいにキレイな子は襲われやすい…そう、例えば吸血鬼なんかに、ね」


「…ぷっ、アンタ変わってるな、普通は通り魔とかだろ。大体、吸血鬼なんて架空の存在だろ?」


「本当にそう思うかい?」


「…?」


意味深なロイの言葉にエドワードは首を傾げた


「私が、その吸血鬼だと言ったら?」


「質の悪い冗談はやめろって」


「冗談かどうか試してみるかい?」


そう言うとロイはエドワードの首に噛み付いた


カプッ――‥


「っ…あ」


甘く、じわりと痺れるような感覚がエドワードを襲った







「信じてもらえたかい?私が吸血鬼だって」


「…うん」


「しかし、君の血は今まで食べてきた中で一番美味しかった。どうかな、このまま君と一緒にいてはダメかい?」


「俺にアンタのエサになれって?嫌だね、何で俺が…」


そう言ってロイの顔を見るとしゅんとうなだれた犬の様だった


「…はぁ、分かったよ」


その姿が可哀相になってつい了承してしまった







そうして始まった吸血鬼との奇妙な共同生活は案外快適だった


家事はエドワードが仕事に言っている間にロイがやってくれていたので、エドワードは随分と自分の時間が持てるようになった


吸血鬼といっても血を吸う以外は普通の人間と変わらないから、まぁ簡単な献血だと思えばいいだろう


量もエドワードの身体を考えてかなり少量だった







ある日、食事が終わったエドワードが外に出て空を見上げると、空には大きな丸い月が出ていた


「おーい、ちょっと来てみろよ」


エドワードがロイにも見せようと声を掛ける


「何だい?何かあるの…ぐっ…あっ」


ところがロイは満月を見た途端、急に苦しみ出した


「ロイ!?どうしたんだよ!大丈夫か?」


「…っ…来るなっ!…私から離れろ…くっ」


「何言って…うわぁっ」


言い終わらないうちにロイに押し倒され、血を吸われた


大量の血を吸われたことによりエドワードの意識は段々と遠退いていった







エドワードは痛みと息苦しさで目が覚めた


「あっ…ん…」


断続的に襲ってくる痛みと、それとは違うぞわりとした感覚に思わず声が漏れる


恐る恐る目を開いてみるとロイが自身を自分の秘所に抜き差ししているのが見えた


「あん…ロ…ロイ…んっ、やめっ」


激しく腰を揺さぶられ奥を突かれながら、エドワードは初めてロイに恐怖を抱いた







「気が付いたかい?」


どうやらエドワードはあのまま気絶していたみたいで、目を開けるとロイが心配そうな顔をして覗き込んでいた


「すまなかった、あんな事をして…満月を見ると理性が保てなくなるんだ…いや、それはただの言い訳だな」


ロイは自嘲の笑みを浮かべる


「本当はずっと君とこうしたいと思っていた。君のことを抱きたい、と…最低だな」


ロイの言葉にエドワードは何も返せなかった


「疲れただろう、少し眠りなさい」


ロイの手が優しく髪を梳く感触が気持ち良くて、エドワードはそのまま目を閉じた


眠っているエドワードの額にロイはゆっくりと口付ける





エドワード


 今までありがとう、


  そしてさようなら――‥







目を覚ますとロイの姿はどこにも無かった


額に手を当ててみるとかなり熱く、身体も怠い


エドワードはこの日のほとんどをベッドで寝て過ごした


ロイはとうとう帰って来なかった







次の日、エドワードは朝からロイを探しに出掛けた


あまり体調は良くなかったが、それよりもロイが心配だった


しかし、結局ロイは見つからなかった


「ロイ…どこ行ったんだよ…」


エドワードの呟きだけが虚しく響く







ロイが居なくなって3日が過ぎようとしていた


街中どこを探してもロイは見つからない。エドワードは隣街へ足を伸ばしてみることにした


しかし夜になってもロイを見つけることは出来なかった


(ロイ…もうこれっきりなのか…?)


エドワードは最後の望みを賭けてある場所へ向かった







エドワードの家を出たロイは当ても無くふらふらと街を彷徨い歩いた


あれから3日間、何も口にしなかったロイの身体はもう限界だった


最後の力を振り絞って2人が出会ったあの丘にたどり着く


寝転ぶとあの日と同じ様に空一面に星が瞬いていた





―綺麗だろ?ここ、俺の特等席なんだ





「ああ…本当に、綺麗だ…」





ロイは星空に片手を伸ばして微笑んだ







「ロイ!!ロイ、しっかりしろ!」


自分を呼ぶ懐かしい声がする…


ロイはゆっくりと目を開いた


「…エド…?」


「ほら、血飲め」


エドワードが屈んで首を差し出すが、ロイは静かに首を振った


「もう…血は飲まない…」


「何馬鹿なこと言ってんだ!飲まなきゃ死ぬんだぞ!?」


「それでも…私はもう血は飲まない…」


「何で…何でだよっ!どうして…」


ロイの言葉にエドワードは涙を流した


「私は…人間になりたかった…君と同じ、人間に…」


「ロイ…」


「愛している、エドワード――」


そう言ってロイはゆっくりと目を閉じた


「ロイ!?しっかりしろっ!」


(くそっ、このままじゃロイは…)


エドワードは側にあったガラスの破片で自らの手首を切った


そしてポタポタと流れる血をロイの口に垂らす


エドワードの血が数滴口に入るとロイはうっすらと目を開けた


「…エド…?…ッ何をしている!」


「だってこうでもしなきゃアンタが…」


「無茶なことを…」


ロイはそう言ってエドワードの手首から流れる血を舐めた


「血ならいくらでもやるから、だから俺の側に居ろ///」


「…いいのか?またあんな風に君を襲ってしまうかも知れないんだぞ?」


「上等だ!受けて立ってやる!」


「受けて立ってやるって…君ねゞ」


思わず苦笑したロイだったが、その顔には幸せそうな笑みが浮かんでいた







「きれいだな」


「ああ、そうだな」


2人で寝転びながら星空を見上げる


「この空にも色んな星があって、大きいのや小さいのや赤いのなんかがそれぞれに輝いてる。俺もアンタも一緒なんじゃないかな…人間とか吸血鬼とかそんなの関係なくて、この地球で同じ様に生きてる。互いを思う心に種族なんて関係ないんだ」


「…ありがとう、エドワード」


「あっ、流れ星!」


キラリと光った流れ星に向けて、ロイとエドワードは心の中で願いを唱えた





君と、



アンタと、



これから先もずっと一緒にいられますように――‥





            fin.





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