蛇足
しつけ
「彦星、どうしてそんな態度をとるの?これじゃあよしお君言いたい事言えないだろ?」
楓の言葉に彦星は未だにぶすくれた表情のまま不満そうな表情をうかべている。
なにやら周りから「ママがまた説教たれてんぜー」という声が聞こえた気がした……というかはっきりと聞こえてきたが、とりあえずそれはこのまま敢えてスルーしよう。
「彦星……彦星は人の話もまともに聞けない奴だったんだな。あーあ。そうだったんだー。じゃあ、俺もこれからは彦星の話しなんか聞かない」
楓がそう突き放すように言った瞬間、彦星のムッスリしていた表情が一気に曇り始めた。
「ダメ!それは絶対だめ!楓はオレと話さなきゃダメ!!」
「彦星、人の話を聞かない人は他人からも話を聞いてもらえないんだよ。自分ばっかりなんて都合が良すぎるよ」
「でも、でも、それはコイツにだけで……楓の話ならオレちゃんと聞くよ?楓の言う事ならちゃんと聞くもん」
しゅんとして口をとがらせる彦星に楓は「それじゃあ」とにこりと笑顔で彦星を見た。
「それじゃあ、彦星?俺がよしお君の話を聞くっていってるんだから、彦星も一緒によしお君の話を聞こう。今彦星言ったもんな?俺の言う事なら聞くって」
その言葉に彦星は、うぐと言葉を詰まらる。
そこに楓はたたみ掛けるように「彦星?」と笑顔で名前を呼んでやると彦星は、しぶしぶ楓の胸倉を掴んでいた手をゆっくりと離した。
「よし、えらい。えらい。勉強はまたあとで教えるからね」
楓はそう言って彦星の頭を撫でてやると、いつもの如く彦星は嬉しそうに目を細めた。
こうやって言う事を聞いた後はすぐに褒める。
それが、しつけの第一歩だと本に書いてあった。
まぁ、犬の本だが。
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