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蛇足
三人でカレー制作
痛い……物凄く痛い

ヤバい。生理的な食塩水が目からとめどなく零れ落ちそうだ。


楓が額の余りの痛さに動けずに居ると、背中に突進してきた彦星が、そのまま背中に抱き付いてきた。


お願いだから抱き付く前にまず謝罪の言葉を申し述べろ!

「かーえでー!なぁ!今何してたんだよ?なぁ!!よしおなんかと何喋ってたのさ!………つーかよしお、お前楓と何話してたんだよ?教えろ」

なんかってお前……
つーか、後半部分声低くなり過ぎだから!
よしお君怯えちゃうから!!


彦星の声が若干不機嫌さを含んでいる事に気付いた楓は、痛む頭を必死で我慢し顔を上げた。

「今、家庭科の時間だから一緒にカレーを作ろうって話をしてたんだよ」

顔を上げると、やはりそこには顔を真っ青にして彦星を見ているよしおが居た。

あぁ、彦星。
またよしお君を威嚇して……

「ほんとだろーな?」

彦星は楓の背中にピッタリと張り付いたまま、よしおを睨みつけた。

「あ……あぁ」

よしおは若干彦星と目を合わせないようにして返事をする。

そんなよしおを彦星は不信そうな目で見つめると、楓を掴む腕の力を更に強めた。

「ふーん……じゃあ何で楓起こしてくれなかったんだよ…オレも起こしてくれれば良かったのに」


お前を起こすなんて重労働、朝だけで勘弁してくれ……!


楓はぐったりと肩を落とすと、腰に回された彦星の腕をポンポンと叩いた。

「彦星起こしてもすぐ起きないだろ?だからだよ……今日なんかいつもに増して起きないし……お陰で遅刻寸前だったじゃないか」

楓が少しムッとした声を上げると、途端に彦星は「うぐ」と言葉に詰まった。

そんな彦星に楓はだんだんと口に出す内容が愚痴になっていくのを理解しながら、それを止められずに居た。

普段楓はあまり他人に愚痴を言う事などあまり無い。

しかし、そんな楓が愚痴るのを止められない程、今日の朝の彦星の寝起きは酷かった。

「だから起こさなかった。彦星起こすの疲れるし」

「でも……でも、オレ楓が起こしてくれたら最後はちゃんと起きる……」

楓の言葉にしゅんとなりながら必死に弁解を図る彦星。

だがそんな彦星に対し、自ら起きようという意思のまったくない彦星に楓は自分の眉がヒクリと動くのを感じた。

「だったら最初からちゃんと起きろよな!はぁ……もう彦星を朝起こすのも止めようかなぁ」

そう言った瞬間、楓は自分の背中で彦星が息を呑むのを聞いた。

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