蛇足
2
「ねぇ、母さん。こいつ全然ダメ。辞めさせて」
その言葉に今までただアタフタしていたよしえは、困ったように少年へと駆け寄った。
「よしちゃんダメよ?!こんな乱暴な事しちゃ……もぅ、いつもこうなんだから」
「はぁ、だって母さんが連れてくる家庭教師全員俺より頭悪いんだよ。仕方ない」
少年はそう言うとまた、楓の脇に尻もちをつく男に目をやった。
「つーわけだから、さっさと帰ってくんない?」
その冷たい声に男性は脇で自分の体を支えていた楓の手を乱暴に振り払うと、勢いよく立ちあがった。
その勢いで、今度は楓が地面に尻もちをつく羽目になる。
「いてっ」
「あらあら、どうしましょう!かえちゃん、大丈夫?」
「大丈夫です」
慌てて楓に駆け寄ってきたよしえに楓は腰をさすりながら、笑顔で答える。
そんな楓によしえは安心したように、胸を撫で下ろすと、すぐに立ち上がった男に向き直った。
「あの、先生?息子が失礼な事をして本当にもし訳ありませんでした」
そう言って深々と頭を下げるよしえに、先生と呼ばれた男は気まずそうに目をそらした。
「い……いえ。こちらこそ、十分な指導を行えず……申し訳ありませんでした。それでは、俺はもう失礼させて頂きます」
男はまくし立てるように言うと、まだ何か言いたそうなよしえを無視し足早に店から出て行った。
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