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蛇足

微妙な沈黙が二人の間に流れる。

しかしその沈黙を破ったのは、沈黙を作ったよしお自身だった。

「………気持ちわるくはねぇよ。だからお前もあんま気にすんな」

突然かけられた慰めるような優しい言葉に楓はフルフルと体を震わせた。

よしお君
キミは
キミは
なんで


「なんでそんなにいい奴なんだよ!」

「は?お前またそれかよ。」

よしおがこないだの帰りの事を思い出し苦い表情を浮かべていると楓は顔を歪ませてよしおを見上げた。

「普通に優しくされるのだって今の俺には凄く嬉しいんだよ」

こんな学校に居ると“普通の優しさ”も一気に価値上昇なんだよ!
オイルショック並にね!


優しさに酷く飢えたような顔の楓によしおは同情の眼差しを向けた。

「……お前、苦労してんだな」

「……人並みにね」

ぜってー人並みじゃねぇだろお前!!

そうよしおが内心突っ込んでいると、楓は気を取り直したように求人誌に目を落とした。

「バイト……見つけなきゃなぁ」

「……だからお前堀田の「却下」

「なんでだよ?お前ら……仲いいだろ。いつも一緒にいるじゃねぇか」

よしおは、その言葉を発した自分の声が明らかに不機嫌になっているのがわかった。

しかしそんなよしおを楓は気にする事なく求人誌に目を落としたまま話し続けた。

「だから嫌なんじゃないか。俺、入学してから学校も帰りも家でもずっとアイツと一緒なんだ。その上バイトまで一緒なんて……いくらなんでもうんざりするだろ」

ハァと楓が深い溜め息をついていると隣に居るよしおが「おい」と声をかけてきた。

何だろうと楓がよしおを見上げれば、何やら目を見開いてこちらを見つめるよしおの姿。

「ど……どうしたの?よしお君」

「お前……」

「…………」

「堀田と同棲してんのか」


あぁ、忘れてた。

よしお君も純然たる


TSUTAYA学園の生徒なんだった。

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