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蛇足


クラス内は乱闘騒ぎになる事はあっても皆基本馬鹿であるせいか、すぐに忘れて笑い合う程仲がよい。

なのに楓だけはやはりその輪の中に入りきれずにいた。

楓も周りのクラスメート達も互いにが互いに一線を引いていた。

そのため楓は最近何かある度に自分はクラスから浮いているんだと強く思うようになった。

そんなクラスの中で唯一友達だと言えるのが彦星とよしおだ。

(蛭池はいろいろ超越してて分類しづらい)

だからせめて二人には仲良くあって欲しかった。

それなのに二人の仲が良くなる事は一向になかった。


なんでだよ……

楓はそんなやり切れない思いを抱え日々を漫然と過ごすしかなかった。

そして現在。

彦星とよしおは睨み合っている。

楓は小さく溜め息をつくと、そのまま床を見つめ続けた。

俺がダメなのかな

そんな思いをその胸に抱きながら。







「あいつら何やってんだ?」

「つーかヒコの奴、何で三木を抱き締めてんだよ?あいつらホモか?」

「いや……あれは抱きしめてるって雰囲気じゃねー。見ろよ、あのヒコとよしおが睨み合ってんぜ?」
「何だ何だ!?喧嘩か?!」

「喧嘩って……ヒコ相手じゃ喧嘩になんねーだろ」

「でも喧嘩ならよ、何で三木がヒコに捕まってんだよ?喧嘩すんならぶっちゃけ邪魔だろー?」

「あ、あれじゃね?三木はひとじちなんじゃね?」

「ひとじちってあれか……よく銀行強盗とかで犯人に銃とか突きつけられてるやつか?」

「そう!今の三木はヒコのひとじちなんだよ!」

「ヒコひとじちとったのかよ!マジビビる!」

「ヒコまじもんのワルじゃね?」

「やっべーマジで見てるこっちがゾクゾクすんぜ」





楓は俯きながら遠くに聞こえるクラスメート達の会話を聞いていた。

いや、聞いていたのではない。

勝手に奴らの声が耳に入ってくるのだ。

そのせいでシリアスな考えに浸っていた楓の思考は完全にストップしてしまった。

ストップどころかショートしそうだ。


正直こんなズレた会話など聞きたくなかった。

ズレている。

もうズレ過ぎて歪みが出来てしまっている。

自分の会話レベルが地に着いているレベルだとするならば、奴らは最早天空の城の如く大空に舞い上がってしまっている。

人質すら平仮名発音の彼らだ。

その中に自分が馴染もうとは所詮無理な話だ。

人は飛べない。

天空の城は飛んでいる。

同じ場所になど存在できないのだ。



あー……久々にラピュタ見たくなってきた



楓は睨み合う二人の間でこの目の前にある現実からダッシュで逃げ出した。

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あきゅろす。
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