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蛇足

「そう、そんな風にね?よしよし、ちゃんと出来るじゃん彦星」

そう言って楓が笑顔で彦星の頭を撫でてやると、彦星の顔にも少しずつ笑顔が戻ってきた。

「オレこれから楓の顔見て話す!オレ楓の顔好きだ!」

「…そりゃどうも」

それはモテる彦星に言われると素直に喜べないセリフだったが、彦星の言葉に嫌みなど一切ない事を知る楓は素直に礼を述べた。

「な!池ちゃん!オレら仲良しだろ!」

すると突然彦星は、未だにドアの前に立っている蛭池に満面の笑みを向けた。

「……あぁ、そうみてぇだな。」


おー、ちょっと存在を忘れかけていたぞ、蛭池君。

周りの不良達の視線は総集まりだけど。

「んで?お前らは一体何をよしおと揉めてたんだ?」


……よしお君?

よしお君!!

そうだこっちもすっかり忘れてたよ全く俺のうっかりさん!!


楓が慌ててよしおの方に顔を向けると、そこにはさっきまでとはいかないが、やはりよしおが難しい顔で楓を見ていた。

「よしお君!!」

顔は急いでよしおの下へ駆け寄るとカバリと一気に頭を下げた。

そんな楓の突然の行動によしおはポカンとした顔で楓の頭を見つめていた。

「ごめん、よしお君!!見苦しいもの見せちゃって!」

「………は?」

よしおが上手く状況を掴めずに居ると、頭を下げていた楓がゆっくりと頭を上げた。

その目は一心によしおを見つめている。

先程、楓から目を逸らされた時とはまた違った感情の渦がよしおの中に湧き上がってきた。

それと同時によしおの顔にも急激に熱が集まっていく。

「彦星もね、悪気はないんだよ!ちょっといろいろ寂しくて人の温もりが足りないだけなんだ!」

楓の言葉に彦星は目をしばたかせ、蛭池は溜め息をついた。

そして言葉をむけられている当のよしおは自分の意志とは無関係に体が火照るのを止められずに居た。

「だから他人よりちょっとスキンシップが激しいだけで……だから……あんな見るに耐えないものを見せといて言うのも何だけど、よしお君。彦星を怒らないでやってくれるかな?」

楓は必死さの余り徐々に自分がよしおとの距離を縮めている事に気付いていなかった。

そんな楓によしおは一歩また一歩と後ろへと後退りをする。

「もちろん、俺もこれからは気を付けるし彦星にもきちんと言ってきかせるから……だからよしお君!」

よしおの背中が教室の壁へと当たる。

もう背後に逃れる事はできない。

そんな楓によしおは自らの鼓動が今までにないくらい早まるのを体中で感じた。


「ごめんなさい」

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