蛇足
一人でカレー制作
学校にも慣れた
(ある程度)
バイトも始めた
(花屋)
友達も出来た
(よしお君)
大親友も出来た
(彦星と蛭池君)
けどやっぱ
浮いてるんだよなぁ
俺
「今日の家庭科の授業はー…えー、カレーとかを作ろうと思う……作りたいヤツは家庭科室行って勝手に作れ。以上」
そう言って家庭科教師は教壇の上にドサリと大量の袋を置くと、欠伸をしながら教室を出て行った。
その話を唯一覚醒した頭で聞いていたのは………
三木楓
ただ一人だった。
…どうしよう……
楓はただひたすら教室の上に置かれた食材を自分の席で見つめていた。
材料は一応あるみたいだけど……
あんなんでいいのか……高等教育。
楓は溜め息をつくと、一人椅子から立ち上がった。
丁度今日は弁当を作ってきていない。
というか作る暇がなかった。
そもそもの原因は今も楓の隣で安らかな眠りについている堀田彦星のせいであった。
この堀田彦星という男は寝起きがすこぶる悪く、いつも起こすのに楓は30分以上を要してしまうのだ。
それでも楓はいつもはキチンと弁当を手に余裕をもって学校には到着していた。
だが、それはいつも楓の弁当を彦星の祖母が朝からちゃんと準備してくれているからだ。
決して楓が自分で朝から弁当を作っているわけではない。
しかし、そんな頼りの祖母は老人会の温泉旅行に出かけているため、昨日から家を空けていた。
『ごめんねぇ、お弁当作ってあげられなくて。かえちゃん一人で大丈夫かい?』
『うん、俺の事は心配しないで。楽しんで来てよ、おばあちゃん』
そう言って笑顔で見送った結果がこれだ。
今朝は、いつにも増して寝起きの悪い彦星に悪戦苦闘していると、いつの間にか遅刻ギリギリの時間になっていた。
そのため弁当など作る暇など勿論なく、楓はもともと無い体力を振り絞り大爆走で学校へと駆け込んだのである。
まぁ、丁度良かったっていえば丁度よかったのかもな。
楓は周りで爆睡している不良達を尻目に教師が持って来た食材に手をかけた。
俺……図太くなったな
楓は自らの微妙な成長に溜め息をつくと袋の中身をぼんやりと眺めた。
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