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蛇足

前言撤回

楓と彦星。

面白いなどとんでもない

蛭池は、キョトンとこちらを見つめる楓を前に溜め息をついた。


これは一種の綱渡りだ。

こちらが気を抜けば友人二人は一気に奈落の底へと落ちてしまう。

だが本人達はの事実に全く気付いていない。

……見ているこっちの心臓が保たないではないか。

蛭池は楓に手渡されたタオルで手を拭きながら眉をひそめた。

「蛭池君、突然どうしたの?」

「いや……何でもねぇ。……ただ楓」

「何?」

「あんまし彦坊を……甘やかすなよ?」

蛭池が控えめに言うと楓は得意気な顔で頷いた。

「もちろんだよ。手放しな愛情は人間を駄目にするからね!」

「…………だな」

蛭池はガクリと肩を落として頷いた。

……もうこの際何でもいい。

蛭池は内心疲れ果てていた。

そんな蛭池をよそに楓はちらりと時計を見て「もうこんな時間か……」と呟いた。

時刻は夜の11時を指していた。

「じゃあ、俺はそろそろ部屋に戻るね?蛭池君、相談乗ってくれてありがとう」


そう言って楓が立ち上がろうとした瞬間。

ばたん


勢いよく部屋の扉ら開かれた。

「なー!池ちゃん!楓知らねー?!って楓ここに居た!」

扉を開けるや否や、彦星は楓を視界に見つけると一気に楓へと飛びついた。

そのせいで立ち上がろうとした楓は一気に彦星によって押し倒された。

「イダダダダ!彦星……足!俺今凄く足痺れてるから!ちょっ……どいて彦星!っいた!」

「楓居ないからオレスゲー捜した!」

そう言って更に力強く抱き締める彦星に楓は更に悲鳴を上げた。

「わかった!わかったから!彦星!痛い!」

「あはは!!楓大好きー!」




「………………」

蛭池はそんな二人の様子を黙って見つめると、静かに部屋から出て行った。

先程零れたイチゴミルクのせいで手がベトつく。

そんな自らの手を見つめながら蛭池は深く溜め息をついた。

「…………はぁ、後は自己責任だぜ。楓、彦坊」

そう呟くと部屋から聞こえる騒がしい声に背を向けた。


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